儲かる漁業をつくれ! 元伊藤忠社員の挑戦 新世代リーダー 立花貴 漁師

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立花 貴
事業家・漁師
立花 貴
1969年、仙台市生まれ。43歳。東北大学法学部卒業後、1994年伊藤忠商事入社。リテール部門などを経て1999年末、食品流通関連の会社エバービジョンを設立。2010年に大株主のファンドなどから社長を解任される。東日本大震災後の11年8月、石巻市・雄勝の漁師とともに、漁師の合同会社「オーガッツ」を立ち上げ、発起人に(12年9月株式会社化、社長は伊藤浩光氏)。震災地の教育支援団体公益社団法人「Sweet Treat 311」代表理事、 社団法人「東の食の会」理事、社団法人「3.11 震災孤児遺児文化スポーツ支援機構」常任理事なども務める。著書に『心が喜ぶ働き方を見つけよう』(大和書房)。
――宮城県・石巻市雄勝町。市の北東部湾岸に位置し、中心部から車で約40分。津波で多くの小学生が犠牲となった、あの大川小学校からも程近い場所だ。昨年の東日本大震災は、日本の原風景が残るこの漁師町も一瞬にしてのみ込んだ。約4300人いた町の人口は、流出などもあり今は1000人を切る。
衰弱し切った町に、「被災地の新しい町づくりを」「日本の新しい漁業の仕組みを」と東京から住民票を移し、事業家兼漁師となった男がいる。立花貴、43歳。もともと雄勝と関わりがなかった彼が昨年8月、地元漁師と立ち上げた会社「オーガッツ(OH!GUTS!)は、生産(養殖)から販売までを「一気通貫」。
地元復興はもちろん、後継者不足、複雑な流通体系などでにっちもさっちも行かなくなっている日本の漁業に、一筋の希望を与える存在だ。立花は何を目指し、どこへ向かおうとしているのか。

消費者と直接深くつながる「そだての住人」制度

10月下旬の早朝。立花のいる漁師の会社「オーガッツ」の本拠がある石巻市・雄勝町水浜の作業場では、獲れたばかりのホタテの箱詰め作業が行われていた。「今日は69箱です!よろしくお願いします」。立花の掛け声で作業は始まった。作業はスタッフも含め、3~4人だ。                   

早朝獲れたホタテを作業場へ(左が立花、右はメンバーの鈴木晃喜)

ホタテから殻をとり、特製の味噌だれに漬けて箱詰めしていく。ホタテは直接味噌をつけるのではなく、ガーゼを敷いた形でホタテと絡ませる。ホタテの肉厚はなかなかのもの。そのまま生で食べるのがおすすめで、軽く炙ってもおいしく食べられるという。

「こうやって絡ませると、じわじわと味噌の味がしみ込むと同時に、ホタテの自然の甘味が生きるんですよ。味噌は仙台のブランド味噌。魚介類と相性が抜群なんです」

これらのホタテの出荷先は、「そだての住人」宛てだ。「そだての住人」とは、ひとことでいえば、オーガッツを支えるオーナー制度のこと。通常の、いわゆる「1口オーナー制度」に近い。1口は1万円。ホタテ、銀鮭のどちらか、または漁師のおまかせ旬コースを選んでもらい、発送する仕組みだ。

カキは2013年冬から、ホヤは14年夏以降の出荷の予定だ。消費者が生産者と直接結び付いており、消費者が、商品ができる前におカネを前払いして、育ったものを受け取るという点では1口オーナー制度と同じだ。立花が自身で車を運転し、東京から連れてきた1000人以上の訪問者に加え、インターネットや口コミで全国から募った結果、これまでに約4500万円が集まった。これが養殖をする元手となっている。

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