ハーバード生も泣く、リーダーシップ論 「今、ここで成功のすべてを捨ててしまいなさい」

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世界の超一流ビジネススクールで“日本代表選手”として奮闘する日本人を取り上げるこの連載。第1回にご登場いただくのは、ハーバードビジネススクールに留学中の笹本康太郎さん(33)だ。
電通の社内制度を利用して留学中の笹本さん。海外キャンペーンや海外支社の設立などで世界中を飛び回っていた笹本さんは、「グローバルリーダーシップを学び、さらに活躍したい」とMBA留学を決意。
見事、ハーバードに合格し、2011年9月に入学。現在、2年目を迎えている。「価値観が180度変わるような刺激を受ける毎日」と語る笹本さん。ハーバードビジネススクールへの留学は笹本さんの人生にどんな変化をもたらしたのか。人生を変えるほどインパクトのあった「授業」「出会い」「言葉」をキーワードにリポートする。

今、この場所で成功の数々をすべて捨ててしまいなさい

笹本康太郎さんのハーバードビジネススクール留学生活は、実質、11年4月にボストンで開催された合格者向け説明会から始まった。そのときスピーチをした入学担当官の言葉に、笹本さんは、衝撃を受ける。

合格おめでとう。我々は君たちがこれまでに築いてきた成功の数々を高く評価し、入学を許可した。(中略)。ただし、今、この場所で、その成功の数々をすべて捨ててしまいなさい。これから学校に入る君たちがすべきことは、過去の成功を誇りに思うことではなく、世界に変革をもたらすために、これから何が出来るかを考えることなのです。ようこそ、ハーバードビジネススクールへ。

 

その言葉のとおり、「ハーバードに合格したからといって、過去の成功体験に浸っている場合ではない」と実感したのは、9月に入学して初日の授業からだ。

ハーバードの授業は、すべて「英語でのディスカッション」で進められ、成績の半分は「発言点」だ。しかも厳しい評価システムで知られ、卒業できない人が毎年数人はいるという。

笹本さんは大学時代に1年間、アメリカの大学に留学していた経験があり、TOEFLやGMATといった英語のテストでも高得点を上げている。日本人としては、英語は「ネイティブに近い」と言えるだろう。

にもかかわらず、ハーバードでは、「ネイティブではないハンディ」を感じたのだと、笹本さんは言う。

「『900人の同級生の中で、英語の会話力だけを比べれば、僕は下から何番目だろうか』、と思うほど、周りは全員「ネイティブ」なんです。同じアジア人でも、完璧な英語を話します。授業中、自分の考えを英語にすると、本当に伝えたいことの2割も伝わっていないんじゃないかと思うときもあり、もどかしいですね」

英語だけではない。クラスに1人しかいない日本人として、日本関連のことについては、全部、笹本さんに発言する責任がある。終身雇用、年功序列といった日本独特の組織制度から、トヨタのオペレーション、楽天の社内英語化まで、“日本代表”として、付加価値をつける発言をしなければならない。

広告業界で働き、コミュニケーション能力にはある程度自信を持っていた笹本さんも、最初は苦労の連続だったという。

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