ハーバード生も泣く、リーダーシップ論 「今、ここで成功のすべてを捨ててしまいなさい」

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「あらゆる発言で『明確な立ち位置』『論理的な構成』『具体例』『人を引きつける表現力』が問われます。曖昧な言い回しが通用しない環境で、自分の力不足を痛感しました」

日本人として自分に何が出来るか。成功の数々を捨て去って、ハーバードで考えなさいと言った入学担当官の言葉は、笹本さんの留学生活の始まりに大きな影響を与えた。

世界のイノベーションをリードする日本人

笹本さんが留学中に出会った人の中で、最もインパクトのあったのが、MITメディアラボ所長の伊藤穣一さんだ。

笹本康太郎(ささもと・こうたろう) 
1979年生まれ。高校卒業まで愛知県名古屋市で育つ。2003年京都大学総合人間学部卒業後、電通入社。電通マーケティング局、営業局で、国内外の広告業務に従事。2011年よりハーバードビジネススクールに留学中

MITメディアラボは、ボストンのマサチューセッツ工科大学の建築・プランニング大学院に設置された研究所。世界のイノベーションの殿堂と言われる。

伊藤さんは2011年に所長に就任し、異分野の人と人をつなげて新しい価値を生み出すリーダーとして、世界中から注目されている。

笹本さんは12年1月に、ハーバード大学からほど近いMITまで講演会を聞きにいったのが縁で、伊藤さんと知り合ったのだという。

伊藤さんは、「ビジネススクールからはイノベーションは起こせない」という意見の持ち主。どれだけ過去の事例を綿密に分析し、「成功の法則」を導き出そうとしても、結局は「やってみないと分からない」。座学よりも実践こそすべてという考え方だ。

「アイデアが浮かんだら、すぐオープンにして、周りの人からアイデアをもらおう」

「計画するのではなく、偶然を受け入れよう」

「ルートを決めて地図を見て歩くような未来の決め方はやめるべきだ。コンパスを頼りに進もう」

こんな意見を聞いているうちに、笹本さんは、ビジネススクールとは真逆の価値観に出会った気がしたという。

「伊藤さんって、講演しているときは、カリスマ性あふれる感じですが、直接お会いすると少年のような人なんです。『君は何やりたいの? 誰か紹介しよっか?』みたいな感じで、純粋で、損得勘定なしで人と人を結びつけるコネクターのような方です」

笹本さんが、伊藤さんから学んだことの中で、最も大きな影響を受けたのは「失敗」に対する考え方。伊藤さんは、失敗は財産だととらえているのだという。それに対して日本社会、特に日本の大企業は「減点主義」で、「失敗のリスクのある新しい事業」に挑戦するのが難しい傾向にある。アメリカに比べて、日本は起業に失敗した人が再びチャレンジしづらい国だとも言われている。

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