「伊藤さんも、IT企業を起業したり、投資家をやったりする過程で、失敗を繰り返しながら、新しいものを生み出してきた。僕も『失敗を巧みに避けていく人生ではなく、自ら進んでリスクを取り、新しいことにチャレンジし続けていく人生を送りたい』と、強く思うようになりましたね。」
伊藤さんとの出会いは、笹本さんの人生のコンパスの方向性を間違いなく変えたようだ。
自分の信念をさらけ出す授業
伊藤さんとの出会いから、ほどなくして、笹本さんは忘れられない授業に出会う。
ニン・シエ教授の「Leadership and Corporate Accountability」(リーダーシップと企業の倫理)という授業だ。
この授業では、「経済」「法律」「倫理」の3つを軸にビジネスリーダーの社会的な責任について学ぶ。ディスカッションをするための事例として使われるのは、実際にリーダーが「倫理的にグレーな決断」を迫られたリアルな事例だ。
そうした事例に対し、学生は、自分たちの経験や人生哲学を忌憚なく語る。
例えば、投資銀行で働いている新入社員が上司から「偽物のデータをファックスで送れ」と命令されたケース。
「ハーバードでは、こういうとき必ず、事例と同じような経験をした当事者がクラスにいます。この授業の場合は、リーマン・ブラザーズを解雇された経験を持つ人がいた。
そして、『たとえクビになったとしても上司の命令には従わない、と主張するのは簡単だと思う。でも実際にクビになったことのない人間には、この選択の本当の重みは分からない。倫理的に正しいことがまかりとおりほど、世の中は単純ではない』と発言したんです」
イラク戦争で米軍部隊を率いていた隊長が、難しい決断に迫られたケースが取り上げられたこともあった。
このときは、アフガニスタンに駐屯した経験のある元米軍兵士が発言した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら