夢を存分に語り合った授業の最後に、ジャンピエロ・ペトリリエリ教授は、学生たちにこんな言葉を贈った。
「君たちの夢はかなう可能性が十分にあるということ、夢を追うことが君たちの人生を意味のあるものにし、価値あるものにすることを、覚えておいてほしい。夢を追うことを、絶対に忘れないで!」
夢を語り合った後の教室で、教授の言葉に泣いている学生もいた。呉さんも思わず、もらい泣きしそうになった。
「頭がパンパンになるぐらい勉強して、激しく議論して、夢中に過ごした1学期の最後に贈られた言葉でした。『ああ、そうだよな。夢をかなえるためにハーバードに来たんだよな』ともう一度、初心を思い出しました。それと同時に、この授業がきっかけで、自分の夢が“大きくなった”ことに気づきました。会社のために、日本のために何ができるのか。深く考えるようになりましたね」
自分を赤裸々に語る授業で、学ぶこと
1年目のリーダーシップの授業に感銘を受けた呉さんは、2年目、さらに自分のリーダーシップスキルを磨くべく、上級コースを選択する。
ジョン・ガバーロ教授の「Authentic Leadership Development」(真のリーダーシップ論)だ。ガバーロ教授は、前述の「ハーバードの卒業生が医療機器メーカーで苦闘するケース」を書いた教授で、リーダーシップ論の大家でもある。
この選択科目では、1グループ6人のメンバーで、「リーダーとはどうあるべきか」ということについて、深く話し合う。
ガバーロ教授は、「リーダーは、自分のことをよく知り、自分の信念に正直であるべき」と教える。だから、この授業では、成功したリーダーについて語るのではなく、自分を知ることに重きが置かれる。
グループディスカッションでは、自分のリーダーシップスタイル、強みや弱み、失敗した経験、生い立ち、将来の悩みなどが赤裸々に語られる。詳細は、学生の個人情報にかかわるため門外不出だが、一般論として書いてみると、こういう感じだ。
「本当は○○会社に就職したいんだけど、給料がハーバード入学前よりも下がってしまう。どうするべき?」
「私はファイナンスが好きだけれど、得意なのかどうかがわからないな」
「僕はこんなふうにリーダーシップをとってきたけど、はたして正しいのかな」
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