エリートたちのキャリア・恋愛事情<最終章>

インドで悟った真実の愛

私は胸が痛んだ。こんなにかわいい子供たちが、文字も読めず、親に決められた結婚を余儀なくされている。今でも近所の農村の一部では、女性が一人で出歩くことは許されず、家で会話することも許されない。だから外で客や友達と笑う時間がとても好きなのだという。そんな彼女は美しい英語を操るが、インドの文字も読めない。

話していると非常に聡明な印象を受けるのだが、基本的な教育の機会を阻まれているため、他の選択肢を知ることができない。

ただしふらっと訪れた外国人が、勝手にかわいそうだと思ってはならない。彼女の人生もまんざらでもなさそうだ。いつも屈託のない笑顔で(私がたっぷり、どう見てもぼったくりプライスの布を買うからかもしれないが……)、純粋で幸福な印象を受ける。

美しい海と太陽の光の下で、地元の友人と布をずっと売る姿は美しく、コンクリートで囲まれた灰色の高層ビルで転職を繰り返す太っちょコラムニストに比べ、職業選択は不自由ながらも、幸福な生活を送っているように思えるのだ。

「夢の仕事は靴磨き——それで十分幸福」

最後にインド最大の経済都市ムンバイで、ボリウッドスターを見るべく映画館を探している、赤いセーターの大柄な男性(私)。

そこに若い青年が世界地図を売りに来る。私は3ブロック先にあるはずの映画館を探しているだけなので、できれば近所の地図が欲しく、間違っても“壮大なメルカトル図法の世界地図”だけはご遠慮したい。徒歩5分で着く距離なので、世界地図など売りつけられても大迷惑である。

しかしあまりに熱烈に売り込んでくるので100ルピーを払い、その若者に案内してもらうことにした。

そこで彼は映画館への途上、靴磨きの人を見つけては、あれが俺の夢の仕事だ、あれで俺の家族はみんな幸せになれる、と熱心に語りかける。

靴磨きをすると毎月2000ルピーを貯められる、そして故郷のジャイプルにも帰れるし家族にも送金できる、どうか私の人生を変えてほしい――。 

無事映画館に着いた後、「ついでに映画のチケットも買ってくれ」と頼まれたときはさすがに失笑したが、重要なのは私たちが“最も厳しい仕事の1つに挙げる、儲からない仕事”も、人生のコンテクストによっては夢の仕事になりうるという事実である。

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