佐藤優の教育論「偏差値を追うと人格が歪む」 『子どもの教養の育て方』特別編(その1)
偏差値が高い学校が、いい学校とは言えない
井戸:親としては、子どもは勉強ができる子であってほしいし、偏差値の高い学校に入ってほしいと思いますが、それが本当に子どもにとって幸せなのかということについては、よく考えなければいけません。勉強以外のところで才能を持っている子もたくさんいるわけです。
偏差値を重視する子育てについては、どう思われますか?
佐藤:教育ということになると、どうしても偏差値とか進学とか、そういったことを基準に考えがちです。しかし、その弊害というのもすごくあります。経験から少しお話ししましょう。
僕の卒業した埼玉県立浦和高校というのは、県内の公立高校の中でも難しいといわれて、200点満点の試験で180点くらいとらないと合格しなかった。
井戸:全国の公立高校の中でもトップクラスの学校ですよね。
佐藤:それでちょっと話は飛ぶようですが、灘とか開成といった難関私立高校の入試は、中学の段階を超えた問題を出すんです。高校1年生の1学期終了分くらいまでの問題が出ます。そのわずか3カ月の違いが、入試のときの決定的な差になるんです。
これに対して浦和高校の場合は、埼玉県の統一入試だったので、中学の範囲を超えた出題はない。それだから、絶対にミスをしないというスタイルの受験勉強が必要になりました。こういう勉強は、官僚になるための準備としてはいいのですが、創造力はつきません。
外務省に入ってみると、雰囲気が基本的に浦和高校の繰り返しだったんですね。表面上はみんな愛想がよくて、要領がよくて、頭がいい。ただ、ほとんどが「一番病」なんです。