佐藤優の教育論「偏差値を追うと人格が歪む」 『子どもの教養の育て方』特別編(その1)

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実力以上に努力すると、人の足を引っ張る人間になる

井戸:国会議員の中にも多いのですが、むやみやたらと自己評価が高い人がいます。謝ることができないというのもそうだと思うんですが、「何様型」の人がすごく多いんです。

井戸まさえ(いど・まさえ)
前民主党衆議院議員(兵庫1区)。
1965年、仙台市生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。松下政経塾9期生。東洋経済新報社勤務を経て経済ジャーナリスト、兵庫県議会議員を2期勤め、2009年より民主党衆議院議員として、衆議院内閣・法務・消費者特別各委員会理事を歴任した。5児の母。公式ホームページ

佐藤:そういう人が多いのは、人間というのは自己中心的な動物だからです。特に近代になると、そういうふうになってくる。物事を自分の頭で組み立てるから。

でも、そこで「何様型」の人に教えてあげるといいのは、「実力とかみ合っていないと滑稽だよ」ということ。プライドは高いけれども実力は低いというのを、客観的に見ることができるようになればいいのですが。

井戸:「何様型」は、人を蹴落としたりけなしたりすることによって自分が上がるみたいなところがありますよね。

佐藤:その話で思い出すことがあるのですが、僕が外務省で研修指導をしているときに非常に困ったのは、外交官試験でバネが伸び切って入ってくる連中でした。

井戸:それはどういうときにわかるのですか?

佐藤:苦節何年という人たちですね。外務省に入るまでに4~5年かかったとか。あるいはノンキャリアでも、たとえば短大を出てから別の大学に行って、大変な努力をしてはい上がってきたとか。

そういう人たちは、努力好きなのはいいのですが、もともとの資質とか記憶力とかが関係するので、死ぬほど努力しても伸びに限界がある。そうすると、人の足を引っ張り始めるんです。そこが問題なんですね。

出世はしょせん相対的な競争だから、努力もするんだけれども、プラス人の足を引くということをやれば速いんですよ。

基本的には、霞が関というのはそういう人たちの集団ですね。だから、「何様型」というのは、霞が関には多い。また、そういう性格を隠す知恵がちょっと足りない人がいる。それで不必要な敵をつくります。

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