佐藤優の教育論「偏差値を追うと人格が歪む」 『子どもの教養の育て方』特別編(その1)
実力以上に努力すると、人の足を引っ張る人間になる
井戸:国会議員の中にも多いのですが、むやみやたらと自己評価が高い人がいます。謝ることができないというのもそうだと思うんですが、「何様型」の人がすごく多いんです。
佐藤:そういう人が多いのは、人間というのは自己中心的な動物だからです。特に近代になると、そういうふうになってくる。物事を自分の頭で組み立てるから。
でも、そこで「何様型」の人に教えてあげるといいのは、「実力とかみ合っていないと滑稽だよ」ということ。プライドは高いけれども実力は低いというのを、客観的に見ることができるようになればいいのですが。
井戸:「何様型」は、人を蹴落としたりけなしたりすることによって自分が上がるみたいなところがありますよね。
佐藤:その話で思い出すことがあるのですが、僕が外務省で研修指導をしているときに非常に困ったのは、外交官試験でバネが伸び切って入ってくる連中でした。
井戸:それはどういうときにわかるのですか?
佐藤:苦節何年という人たちですね。外務省に入るまでに4~5年かかったとか。あるいはノンキャリアでも、たとえば短大を出てから別の大学に行って、大変な努力をしてはい上がってきたとか。
そういう人たちは、努力好きなのはいいのですが、もともとの資質とか記憶力とかが関係するので、死ぬほど努力しても伸びに限界がある。そうすると、人の足を引っ張り始めるんです。そこが問題なんですね。
出世はしょせん相対的な競争だから、努力もするんだけれども、プラス人の足を引くということをやれば速いんですよ。
基本的には、霞が関というのはそういう人たちの集団ですね。だから、「何様型」というのは、霞が関には多い。また、そういう性格を隠す知恵がちょっと足りない人がいる。それで不必要な敵をつくります。