現代は選択肢が多いからこそ人生哲学が必要
さて、これら3つのケースを総合して考えるにつけ、まったく逆の状況で悩んでいる外資系エリートたちの人生に思いを馳せる。高等教育と、職業選択の自由と、うらやましがられるジョブオファーの真っただ中で、人生の選択に思い悩む皆さん。これだけの社会的条件に恵まれていても、前述の人々に比べ、幸福な人生を送っているとは言いがたい人たち。
高望みな選択肢が多いことはある人々にとっては幸福なことだが、また多くの人にとっては底抜けの煩悩へのスタートラインとなる。
私は先日、リクシャーの運転手さんに、「日本や韓国は恋愛、恋愛で、男女がすぐくっついたり別れたりするから愛情が育まれない。私たちは神に決められ、その結婚は絶対だから安定して幸せだ」と諭されたが、これには一理ある。
短期的な心のすれ違いや自己実現とやらの追求のために、1つのことや人に向き合う我慢が足りず、頻繁に仕事や恋人を取っ替え引っ替えしている人々を見ると、人はやみくもな“上昇志向”や“選択肢の拡大”だけでは決して“長期的な幸せ”をつかめないことがみてとれる。
選んだ道に、長期投資する大切さ
ここで株式投資に例えるが、伝説的なファンドマネジャーとして名高いピーター・リンチ氏はその著書の中で、“株式投資で勝つ秘訣は、20年間、選択した会社と結婚することだ”と説いている。
多くの投資家は少し上がったり、やがて必ず訪れる暴落のタイミングで我慢できずに底値で売ってしまう。短期の変動はどんなすご腕のファンドマネジャーでも予測できない。しかし長期投資という話になれば、株式は債券、通貨、土地、その他あらゆる代替的投資手段をアウトパフォームしている。
実際のところは、銘柄選択に知恵を注ぎ込み、銘柄選択に成功する人は多いが、それを“持ち続ける勇気/忍耐力を兼ね備えないため失敗する投資家”が大半だ。
このことは人生の多様な局面に当てはまる。人間は仕事でも、投資でも、恋愛でも、短期的にネガティブなニュースに出くわしたとき、すぐに他の選択肢に流れてしまいがちだ。中でも、他によい選択肢のある人なら、なおさらである。
人間の99%は不自由でこそ幸せになれると説いている人がいるが、これは(程度にもよるが)あながちウソでもない。
自由で選択肢が多いからこそ、腹を据えて打ち込めず、どんな生き方が正しいのかわからないパラドキシカルな不幸に、私たちはどう立ち向かうべきなのだろうか。
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