「茶々」親の仇に嫁ぐも、天下を失い子と散る悲哀 不安から「うつ病」を発症、心の安寧を希求した生涯

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大坂冬の陣では奮闘をした大坂方でしたが、実際の戦闘では茶々の忌まわしい記憶を呼び起こします。また互いの兵糧も尽きたことから、いったん和睦となります。ここが最後のチャンスでした。

家康の要求は「牢人の解雇」「大坂からの国替え」「淀殿の人質」。

これらの条件さえのめば、少なくともしばらくは豊臣家の命脈は保てた可能性はありました。しかし大坂方は拒否します。

茶々をのみ込む3度目の落城

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これは私の推測ですが、この拒否は茶々の意見というより、牢人たちの強い反対にあい、彼らを制御できなかったのが原因ではないかと思われます。

無理に牢人たちを解雇すれば、彼らが茶々や秀頼の命を奪うことを懸念していたのではないでしょうか。

武士として生きた証しを刻むための最後の勝負に出る牢人たちの夢に引きずられるように、茶々は大坂夏の陣で3度目の落城に遭い、命を落とします。

茶々の遺体は秀頼とともに炎に包まれ、発見されることはありませんでした。彼女もまた、秀吉の「浪速の夢」だったのかもしれません。

淀殿 茶々 どうする家康
太融寺境内の淀殿の墓(写真:けんじ/PIXTA)
眞邊 明人 脚本家、演出家

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まなべ あきひと / Akihito Manabe

1968年生まれ。同志社大学文学部卒。大日本印刷、吉本興業を経て独立。独自のコミュニケーションスキルを開発・体系化し、政治家のスピーチ指導や、一部上場企業を中心に年間100本近くのビジネス研修、組織改革プロジェクトに携わる。研修でのビジネスケーススタディを歴史の事象に喩えた話が人気を博す。尊敬する作家は柴田錬三郎。2019年7月には日テレHRアカデミアの理事に就任。また、演出家としてテレビ番組のプロデュースの他、最近では演劇、ロック、ダンス、プロレスを融合した「魔界」の脚本、総合演出をつとめる。

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