開口一番、町田さんのコメントは「『ポパイとは何か』といった問いに対する答えを僕自身が持ち合わせていないので、この手の取材は今まで遠慮してきたのです(笑)」だった。
つまり、明確なターゲットを設定して、その人たちの嗜好を分析し、求めるであろうコンテンツを組んでいくといった手法をとっていない。
大事にしているのは「これはイケる、イケない」という感覚だという。だが、その“感覚”が読者を得て、ファンがついていっている。判断する基準について聞いてみると、「『売れる、売れない』は、けっこう気にしていることの1つです」と返ってきた。
「ブルータス」編集部から異動して感じた違い
町田さんは2019年に『ポパイ』編集長に就任したが、それ以前は『ブルータス』の編集部にいた。『ブルータス』は、あるテーマに基づいた特集雑誌として、月2回、年23冊発行されていて、編集は1人1冊、丸ごと任される。テーマが毎回大きく変わり、発行回数も多いことから、必ずしも大ヒットしなくても、企画の切り口が面白いことを求められる。
町田さんが編集部に入ったときはいちばんの若手だった。先輩たちはそれぞれ、ファッション、グルメ、アート、音楽など、自分の専門分野を持っている。新人の町田さんが勝負しても勝ち目はない。そこで「まだ担当者がついていないジャンルを探してみよう」と、過去にないものを題材に企画を組んでいった。
「読者がページをめくっていくと、『そうきたか』という驚きがある雑誌を作ろうと、いろいろトライしたのです」(町田さん)
1人1冊丸ごとだから、企画が当たったかどうかは数字を見れば一目瞭然。「自分が担当した号が売れるかどうかがすごく気になって、当たると思って作ったのに全然ダメだったという経験もありました」。試行錯誤を繰り返すうちに、「少しずつわかるようになってきた」のだという。
ところが、『ポパイ』の編集長になってみて、『ブルータス』のときのように、思い切ったチャレンジをするのは、リスクが大きすぎて難しいとわかった。「『ポパイ』は年12冊しか出さない雑誌なので、ホームランとは言わないものの、どの号も打って出塁するところまでいかなくてはいけない。そこのところは全然違うと感じました」(町田さん)
編集長として、事業の責任を負う役目もある。「ちゃんと数字を作っていける構成を組んでチームを回していく。マネジメント寄りの仕事を意識するようになりました」(町田さん)。
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