
創業当初のキャッチコピーは「わけあって、安い。」。それが今や「高い」という声もある無印良品(撮影:今井康一)
企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。
いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載の第9回は無印良品を展開する「良品計画」に迫ります。
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消費社会へのアンチテーゼとして生まれた無印良品
無印良品が世に生まれ出たのは1980年のこと。西友のプライベートブランドとして、家庭用品9品目、食品31品目、計40品目からスタートした。
当時は「シャネル」や「エルメス」といったラグジュアリーブランドをはじめ、数々のデザイナーズブランドが仰ぎ見られていた時代。“人と違うこと=個性の表現”という価値軸のもと、差別化を競う消費が繰り広げられていた。
そんな時代に、あえて「無印」と記すことで、ブランドを否定した「無印良品」は、ある種の驚きとともに受け止められた。非日常における贅沢さや“感性”による価値を訴える商品が氾濫する中、「日用品における合理性を見直す」という視点も新鮮だった。
バブルに向かってさまざまな“モノの消費”が盛り上がっていく中、そういう社会や文化に対するアンチテーゼだった。高級であること、著名であること、斬新であること、トレンドであることなどをうたい、新しい商品を生み出しては“消費”していく――都会を中心とした“消費の大車輪”が回っていくことへの疑問を呈したのだ。
掲げられたコンセプトは「わけあって、安い。」。「わけ」とは、「素材の選択(ふだん見過ごしがちな素材を見直し、調達する)」「工程の点検(生産するプロセスにおける無駄を省く)」「包装の簡素化(過剰包装を避けて簡略化する)」に根ざしていた。
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