"らしさ"薄れる「三越伊勢丹」社長語る問題の本質 百貨店ビジネスが生き残るために必要なこと

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統合から14年経つ伊勢丹と三越。百貨店を取り巻く環境はますます厳しくなっている(写真:尾形文繁)
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コロナ禍をはじめ、企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。
いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載の第3回は「三越伊勢丹ホールディングス」です。
著者フォローをすると、川島さんの新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。
第1回:ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み
第2回:帝国ホテルが老舗の印象覆す"攻め"を今始めた訳

伊勢丹は、日本にない海外ブランドの紹介にはじまり、「男の新館(今のメンズ館)」を作るなど、「ファッションの伊勢丹」と銘打って、時代の先端を行くファッションを提案してきた。一方で三越が、歴史と伝統に裏打ちされた老舗であることは、改めてここで触れるまでもない。

この連載の記事はこちらから

三越伊勢丹は、老舗百貨店の歴史を堅持しながら、独自性や新しさにこだわってきた。そしてそれが“三越伊勢丹らしさ”を担ってきたのである。

だが、ここ数年、著名ブランドの豪勢なブティックが軒を連ね、平場と呼ばれるオリジナルの売り場が減っているように見えていた。

「面白さ」や「楽しさ」が鳴りを潜め、合理化や効率化を優先させているのでは?と感じ、大好きな百貨店だけに不安な思いを抱いてきたのである。さらにコロナ禍で業績も悪化。2021年3月期は当期純損益が410億円の赤字に転落した。

欧米でも厳しい百貨店ビジネス

百貨店という業態を取り巻く環境は、欧米でも厳しい状況が続いている。

一昨年、ニーマンマーカスやバーニーズニューヨークなど、アメリカの老舗百貨店の倒産は、驚きとともに受け止められた。今年に入り、セブン&アイ・ホールディングスが、傘下にあるそごう・西武の売却を検討していることも明らかになった。一方、渋谷の東急百貨店渋谷本店、新宿の小田急百貨店でも、百貨店という業態にとらわれない再開発の計画が進んでいる。まさに、これからの時代に向けた“らしさ”が問われている。

2021年4月、三越伊勢丹ホールディングスの社長に細谷敏幸さんが就いた。新宿駅南口にあるオフィスに現れた細谷さんは、スマートな体躯にぴったりしたジャケットとスラックスを身につけ、ファッション好きという風情が漂っている。自分の服は自分で選ぶし、すべて三越伊勢丹で購入しているという。

細谷さんは逆風下にある百貨店の舵を、どちらに向けて切ろうとしているのか。“百貨店らしさ”はどこにあり、その強みをどう生かそうとしているのか。

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