"らしさ"薄れる「三越伊勢丹」社長語る問題の本質 百貨店ビジネスが生き残るために必要なこと

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三越伊勢丹には、「お客様の嫌なことを感動的に解決する」「お客様の関心事を革新的に提案する」を実践し、進化に成功した実績がある。

例えば、百貨店の化粧品売り場は、ブランドごとにショップが分かれていて販売員が配されている。自由に商品を手に取って選びづらいし、ブランドを越えて比較検討をするにも不便だ。細谷さんは「お客様が嫌だと感じていることを解決できる」と発想し、百貨店の高級化粧品ブランドに憧れを持つ20~30代に向け、2012年、新業態として「ISETAN MiRROR」を企画して世に送り出した。

「"欲しいときに・好きなように・欲しいモノだけ買える ラグジュアリーコスメショップ"を掲げ、ブランドごとの壁を取り、自由に比較できるショップを作ったのです」(細谷さん)

「ISETAN MiRROR」は、今や百貨店という枠組みを越え、ファッションビルなどにもテナントとして入っている業態に成長した。

実験的な試みを積極的に行うところから道は拓ける

あるいは、バブル最盛期の1990年代初頭のこと、1万3900円のドレスを企画して大ヒットしたことがあった。価格とクオリティーのバランスを意識した商品が求められていると感じ、アパレルにオリジナルのドレスを作ってもらい、「139ドレス」と銘打って打ち出したのだ。ファッションの伊勢丹というブランド力と、絶対価格を掲げたコンセプトのわかりやすさ、商品と価格のバランスの良さが掛け合わさって人気を博した。

売り出す前は、社内で反対する声もあったそうだが、「お客様が嫌だと感じていることの解決提案」として説得し、ほかの百貨店が似たような企画を追随するまでのヒット企画となった。

発想で終わらせず、事業として実体化させるのは容易ではないが、まずはかたちにして行かないと前に進まない。実験的な試みを、積極的に行っていくところから、新しい道が拓けていくと細谷さんは見ている。

では、そこにおける、三越らしさ、伊勢丹らしさとは何なのか――。

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