"らしさ"薄れる「三越伊勢丹」社長語る問題の本質 百貨店ビジネスが生き残るために必要なこと

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「歴史ある百貨店としての強みは、お客さまに認めていただいている『のれん』の価値であり、長い歴史の中で育んできた『顧客基盤』ととらえています」(細谷さん)。

それぞれの独自性もある。「三越は、お客様ありきという企業文化の中から生まれてきた『おもてなし』の力、伊勢丹は、お客様の要望の先を提案する『マーチャンダイジング』の力――いずれも、長きにわたって築いてきた信用あってのこと。そこを大事にしながら、新しい時代に向かって、果敢に挑戦していく姿勢が求められている。

三越の創業は1673年、伊勢丹は1886年と長い歴史と伝統を持つ(写真:尾形文繁)

作り方を変えた中期経営計画

初仕事のひとつとして発表された中期経営計画についても聞いてみた。

「策定の段階から、従来と違うやり方にしました」(細谷さん)

まず細谷さんが全体の枠組みを作り、各事業部門がそれをもとに計画を練る。やりとりしながら一緒に作っていったという。

発表してからのプロセスにも手をかけた。マネジャー職を対象に、1グループ20名に分け、細谷さん自らが説明したという。1回あたり80分の会合を51回行ったという。

それを聞いて、「今まではどうだったのか?」と疑問が湧いた。社長と現場が対話する場面はないに等しかったという。中期経営計画についても、トップマネジメントと経営企画室が策定したものを、それぞれの部署が年度計画に落として実践していく――そういう仕組みが恒常化していた。現場を大事にすべき小売業、それも先端を行っている三越伊勢丹にして、そういう体質になっていたのかと少し驚いた。

三越は来年秋、創業350年を迎える。「節目ということで、いくつかのプロジェクトを稼働させています。三越の歴史観をちゃんと確認して、どんな提案を仕掛けるのか、検討を重ねているところ。伊勢丹は、お客様の憧れを作ることを徹底してやっています」(細谷さん)。

百貨店の雄としての面目躍如となるか、細谷さんの手腕が試される。

(この連載の過去の記事はこちらからご覧ください)

川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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