"らしさ"薄れる「三越伊勢丹」社長語る問題の本質 百貨店ビジネスが生き残るために必要なこと

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「とくに外商の場合、お客様の家まで入らせていただいて、暮らしを取り巻くさまざまな嗜好について、理解させていただいたうえで、次の提案を行っているわけです。今はそれを、外商担当の感性や勘に頼っていますが、そこをデジタルによって、より広く深くできると考えているのです」

そこができていけば、外商顧客に限らず、対象者をもっと広げて趣味嗜好を識別し、AIを駆使して次の提案をしていく状態を作っていく。そこまでを視野にいれているという。

デジタルの強化は、新しい客層を開拓するためでもある。コロナ禍以前、百貨店のデジタル戦略は、時代にフィットするかたちで動いてはいなかった。「アパレルはリアルでなければ売れない」、「袖を通してみないとわからない」というネガティブな声が、業界内で少なくなかったのだが、コロナ禍によって、デジタル戦略を進めざるをえなくなった。

それは三越伊勢丹も例外ではない。ここ2年ほど、次々とデジタル戦略を進めていて、2021年3月期におけるEC売り上げ高は、前期比57.5%増の315億円だった。

アマゾンとは違う生き方をする

化粧品のECサイトである「meeco(ミーコ)」や、食品定期宅配サービス「ISETAN DOOR(イセタンドア)」などが成果を出し始めており、当初250億円の売り上げを見込んでいたところ、計画比26%増という結果をはじき出している。仮想の都市空間でユーザー同士が会話やショッピングを楽しめる顧客体験アプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」の利用者も増えている。

デジタルを介したタッチポイントを作ることは、ミレニアル世代やZ世代をはじめ、百貨店との接点がなかった人が、つながるきっかけにもなる。

ただ、ECの世界はアメリカのアマゾンをはじめ、競合がひしめいている。

「リアルでもオンラインでも、僕はまったく同じだと思っていて。なぜかというと、両者ともニッチです。やっぱりオンラインの専業の方々には絶対に勝てません。そうすると、どういうおもてなしをオンラインでしていくかとなります。

どういうシチュエーションで三越や伊勢丹のオンラインに入っていただけるのか。それは例えばお中元とかお歳暮とかですね。販売されているものはほかのECサイトと同じものであっても、『三越から送りたい』といったのれんを大切にしているお客様がいる。そういうところを僕らは大切にしなくちゃいけない。どんなことを求めているのかというので進化して、商品的にもサービス的にも進化をしていかないといけないですね」

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