帝国ホテルが老舗の印象覆す"攻め"を今始めた訳 コロナ禍で真価が問われる「らしさ」とは?

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コロナ禍で苦境に立たされている帝国ホテルだが、新しい挑戦が続々と始まっている(写真:尾形文繁)
コロナ禍をはじめ、企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。
いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載の第2回は「帝国ホテル」です。
第1回:ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み

帝国ホテルが歴史に裏打ちされた伝統と格式を備えたブランドであることは、ここで改めて触れるまでもない。

この連載の記事はこちらから

ホテルを取り巻く環境は、コロナ禍以前から群雄割拠の状況が続いていた。グローバルに名を馳せている巨大コングロマリットが新しいホテルを立ち上げる一方、既存のホテルが全面的なリニューアルを行う。

小粒ながら贅を凝らしたホテルや、斬新なコンセプトを打ち出したミニホテルなど、新規参入組が次々と登場し、激戦を繰り広げていたのである。

そんな中にあって、帝国ホテルは少し立ち止まっているように見えた。上質なサービスを提供し、品位ある存在感を放っている――ほかにないブランド価値を持っているのだから、時代に先駆けた、否、時代を引っ張るような発信をしてくれたらいいと感じてきた。

コロナ禍で新しい取り組みを続々と開始

ところがコロナ禍に入って変わった。

まず、定額料金で長期滞在する「サービスアパートメント」をスタート。約30平方メートルの部屋で30泊36万円という価格設定が「帝国ホテルにしてはリーズナブルな価格」と話題を集めた。

また、好きなものを好きなだけ取り分けて食べる「バイキング」は、帝国ホテルを発祥としている。これをコロナ禍で全面的に刷新した。

こうした新しいニュースが耳に入るようになってきたのである。

しかし、インバウンドがなくなり、国内旅行者が減って、ホテル業界は打撃を受けている。帝国ホテルも同様であり、2021年3月期の売上高は前期比約6割減の220億円、営業利益は117億円の赤字(前期は31億円の黒字)と苦しんでいる。この時期に、思い切った施策を打ち出している理由を聞こうと、社長の定保英弥さんに話を聞きにいった。

穏やかな笑顔としなやかな物腰で話す帝国ホテル社長の定保英弥さん(写真:尾形文繁)
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