昨年10月には、2036年に向け、東京新本館を建て替える計画を発表した。デザインを手がける建築家として指名されたのは、フランスを拠点に活躍している田根剛さん。保守的なイメージが強かった帝国ホテルが、思い切って若手を抜擢したということで話題を呼んだ。
「これから先の100年、200年に及ぶ歴史を築いていくにあたり、慎重かつ大胆に考えました」(定保さん)。建て替え計画は、特に若い人に向け「あなたたちが、新しいステージに活き活きと立って働くために行う」という意図を込めた。30代後半のメンバーを中心とした20名くらいの社内プロジェクトチームを組み、国内外の多数の建築家を候補としたコンペティションを行ったという。
「プロジェクトが進んでいく過程で、次世代にバトンタッチすることになります。帝国ホテルというブランドのよいところを継承しながら、新しい局面を創っていかなければならないのです」(定保さん)
変えてはならないところと、変えなければならないところを意識し、大きな決断に踏み切った。
営業を続けながらの改装にこだわる理由
計画は実に15年にもおよぶ。これだけの月日をかけるのは、営業を継続しながら改装する点にこだわったことによる。
「帝国ホテルとしてのサービスを絶やさず、今まで培ってきたお客様からの信用を財産にしていく。そうすることがベストと判断した結果です」(定保さん)
日々、積み重ねてきたホテルとしてのサービスを中断することは、培われた「らしさ」を損ねることになりかねない。“信念=らしさ”を揺らがせてはならないという意思が垣間見える。
2021年4~12月期の営業利益は68億円の赤字(前年同期は84億円の赤字)と業績は苦境のさなかにある。ただ定保さんの話を聞き、この危機が、老舗中の老舗である帝国ホテルをいい意味で胎動させたと感じた。
創業来の信念を基軸としながら、未来に向けた挑戦を続けていく。試行錯誤と積み重ねの過程にこそ「らしさ」が表出していく。成果が出ているものもあれば、これからのものもある。この試行錯誤と積み重ねがブランドを形作っていくのではないかと感じた。
第1回記事:ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み
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