"らしさ"薄れる「三越伊勢丹」社長語る問題の本質 百貨店ビジネスが生き残るために必要なこと

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細谷さんは就任後に掲げた中期経営計画で“高感度上質”戦略を掲げ、「生活にこだわりを持ち、上質で豊かな生活を求める消費に応えていくことを目指す」という。その1つが外商戦略なのだ。

百貨店には、外商という少し特殊なビジネスの仕組みがある。優良顧客の御用聞きのような役割で、自宅に出向いて商品を紹介したり、百貨店の各フロアを同伴して巡ったり、場合によっては、他店舗での買い物をサポートすることもある。ホテルのコンシェルジュのように、顧客のショッピングのコンシェルジュを務める役割と言っても過言ではない。

350年もの歴史を持つ日本橋三越には、何世代にもわたる外商顧客がいる。アートをはじめ、マンションや家まで含め、昔ながらの「御用聞き」の役目を果たしていて、「日本橋三越」という看板への信用がそれを支えている。

それがここ数年、効果効率を重視した経営を推し進める過程で、必ずしも優先事項になっていなかった。

「当社の外商のお客様は30万人もいらして、お買い上げがおおよそ1200億円あります。その方たちが使っていらっしゃる金額は、(全体で)おそらく2~3兆円にのぼるのではないでしょうか。そこにどれくらい深くかかわり、お役に立てるかを真剣に考え、実践していかねばならないと感じています」(細谷さん)

外商における三越伊勢丹の独自性とは?

外商を強化するという話は、ほかの百貨店の戦略の中でも出てくる。三越伊勢丹の独自性はどこにあるのか。

「三越の“おもてなし力”と、伊勢丹の“マーチャンダイジング力”を連携させていこうと考えています」(細谷さん)

例えば、外商セールスとバイヤーが連携して動く仕組みがその1つ。顧客が担当の外商に欲しい商品を伝えると、その情報が各部門のバイヤーに共有され、各バイヤーからのお薦め情報が顧客に届けられるというものだ。従来より量も質もある情報提案を行い、顧客サービスを強化していくという。お客の立場に立つと、目利きのプロであるバイヤーからのアドバイスを受けられるのだからメリットがある。

が、こういう外商サービスは、すでに行われていておかしくないのではと思った。細谷さんにそのあたりを突っ込んだところ、「縦割り組織の中で、役割分担がなされてしまっていたところを、お客様視点に立って抜本的に変えていこうとしているのです」と言う。

今後はさらに、外商セールスとバイヤーが連携し、顧客の声をダイレクトに聞くことで、三越伊勢丹としての感度を磨きながら提案力を高めることを徹底していくという。

感性と売り上げのバランスをどうとっていくかは、ファッションビジネスにおける課題の1つだが、ここ数年、効率重視に偏っていたところがあって、お客様があこがれを抱くような感度をバイヤーが提案する力が弱まっていた。そこを強化しようという意図も盛り込まれているのだ。

「そう考えると、すべてのお客さんの趣味嗜好をちゃんと把握しないといけない。それがデジタルなんですよ」(細谷さん)

伊勢丹新宿店(写真:尾形文繁)
日本橋三越本店(写真:尾形文繁)
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