そのスピーチ戦略の1つ目の柱は「圧倒的な物量作戦」です。
大統領専用のウェブサイトには大量のスピーチ動画が掲載されており、国民向け、ロシア国民向け、友好国の国民・政府向けに頻繁に発信していることがわかります。
多いときには日に2本以上アップし、トレードマークのオリーブ色のシャツ、Tシャツ、パーカーに身を包み、日を追うにつれ、伸びていくあごひげが、戦局の長期化と緊迫感を伝えています。
国民向けのスピーチでは、日々戦況を伝えながら、熱く、しかし低く落ち着いた声で、励まし、鼓舞し続ける一方で、海外向けにもきめ細かく、各国の首脳や議会に直接訴えかける「スピーチ外交」を展開しています。
その2つ目の柱が「相手の靴を履く」です。
コミュニケーションはいかに相手の気持ちを慮り、共感を得るのかが核になります。日本の経営者、リーダーの多くは自分の話したいつまらない話を、つまらなく話すので、まったく心に刺さりません。
一方で、優れたリーダーは、まるで、その気持ちが乗り移ったかのように、「相手が聞きたい話」をするのです。そうすれば、相手は自分ごととして、真剣になってとらえてくれます。
だから、コミュニケーションにおいては、「相手の靴」を履き、相手の気持ちになって何を聞きたいのかを考えるのが、何よりも大切なわけです。
内容が国によってまったく違う
ゼレンスキー大統領の各国向けスピーチは、まさにその最も重要なルールを極めて実直に形にしています。驚くのは、内容が国によってまったく違うこと。同じ内容をちょっとアレンジしてというレベルではないのです。
それぞれの国の国民の「最も琴線に触れる言葉は何か、価値観や事象は何か」が徹底的に検証され、余すところなく盛り込まれています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら