一方、ドイツ向けの演説で、彼が16回も繰り返したのは「Wall(壁)」という言葉でした。
「あなた方は再び、壁の後ろにいる。ベルリンの壁でない。ヨーロッパを真っ二つに割る壁だ。自由と奴隷の間の壁。私たちの祖国ウクライナに爆弾が落とされるごとに、その壁は大きくなっていくのだ」
つまり、あの東西冷戦が今再び、大きな壁として、目の前に現れようとしている事実をつきつけたのです。「ベルリン封鎖」やナチスによるキエフ占領などに触れながら、「繰り返してはならない」と訴え、「壁を壊そう」と呼びかけたのです。
「当事者意識を持たせる仕掛け」が詰まっている
カナダ向けの演説では、
「ジャスティン(トルドー首相のファーストネーム)、想像してみてくれ。朝4時、爆発音を聞くことを。あなたが、あなたのこどもたちがその爆音を聞くんだ。オタワ空港が空爆される音を聞くことを、あなたの美しい国カナダ中の多くの場所がその犠牲になるんだ」
「モントリオールのカナダ国旗が捨てられ、ロシアの旗になるのを見たらどう思う?」
など、「エドモントン」「トロント」などカナダの地名をこれでもかと繰り出し呼びかけました。
どのスピーチにも、聞く人すべてに、「今、自分に同じことが起こったらどうするのだ」と、当事者意識を持たせる仕掛けが詰まっているというわけです。
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