働かないオジサンにとっても、それは同じである。過去の職歴しか見ないで、イキイキ働くことができない職場に塩漬けするくらいなら、相性のよい者同士で、個別のプロジェクトを任せてもいいのだ。この連載の第2回で述べたように、能力が劣化したのではなく、組織のピラミッド構造が原因で意欲を失っている中高年社員は、少なくないからである。
「選択と個別交渉」の方向に
社員の能力を最大限に発揮させるという観点に立てば、会社側が、働く場所と内容を決めるだけではなくて、働き手が自らの仕事や、誰と働くかを選べる方向に軌道を修正していくことになろう。そして、選択するという主体的な意思に対して、会社は個別に社員と交渉しなければならない。キーワードは、「選択と個別交渉」である。
そのためには、おのおのの会社の特質に応じて、複線型のキャリアの道筋や選択できるコースを提示する必要がある。この連載の第6回で、38歳時点で退職金が最大になるようにセットされたリクルート社の例を示した。会社に残るか、早期退職するかの選択肢を提示してインセンティブを高めるというのは、この選択と個別交渉のひとつである。
とにかく、いろいろやってみることだ。希望者の多い職場に行けるかわりに、給料は安くするという交渉もありうる。
このように、社員の選択を認めると、管理できなくなるとか、収拾がつかなくなると心配する人事担当者もいるだろう。しかし、案外、人は他人と違うことはできないものだ。社員の信条を見極めようとする姿勢があれば、収拾がつかなくなる事態にはならないというのが、長年、人事畑を歩いてきた筆者の感覚である。
いずれにしても、今までの一律的な人事運用を修正するには困難と手間を伴う。しかし、この壁を突破しなければ、実効性のある効果は期待できない。
こういう選択の提示と、それを受けた個別交渉を人事運用に結び付ける力量が、会社に求められている。もちろん、一度にすべてをこのような方向に持っていけるわけではない。暫時的な対応にならざるをえないだろう。
しかしこの「選択と個別交渉」は、現行の新卒一括採用を基本とした伝統的な会社にとって、避けられない方向だと思えるのである。もちろん若手社員だけでなく、働かないオジサンの対応も含まれる。次回は、この「選択と個別交渉」について、具体例も示しながら考えてみたい。
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