伝統的な会社は、個々の社員のことは各職場の管理職に任せていて、社員に対して一律的な対応を行っている。制度や規程で運用するスタイルなので、個人の要望や申し出は、無視されがちになる。
どういう条件で、社員は自分の能力を最大限に発揮するのか?
それぞれの会社には、おのおののやり方があるのだが、多くの会社では、年次別一括管理だけではもたなくなってきている。高度成長から低成長への変化が、将来の給与やポストが自動的に上がるという幻想を打ち砕いたからだ。そういう意味では、年次別の一括管理は、高度成長期にフィット感が高かったと言える。
それでは、会社側はどうすればいいのだろうか?
結論から言えば、会社や人事部は、スタンスを変える必要がある。「会社から何か(昇給やポスト)を与えると、社員のモチベーションは向上する」という発想から、「どういう場面や、どういう条件で、社員は自分の能力を最大限に発揮するのか?」と問いかけるスタンスへ転換しなければならない。
今後の人事施策や人事評価を検討するためには、一度、社員個人の側に立ったうえで、そこから会社側の対応を考えていくというプロセスを踏む必要がある。そのひとつの例として、前回、居酒屋での「道草休暇」の話を紹介した。
このスタンスの転換は、組織全体の活性化に絡むことではあるが、中高年社員にとっても大きな刺激策になりうる。前回紹介したA氏の勤める人事部は、若手・中堅社員と、中高年社員の担当者を分けている。ただ、若手社員も数年すれば中堅社員になり、また数年すれば中高年社員の仲間入りを果たす。各社員が連携して働くことを考えると、明確に両者を分けすぎるのは得策ではないだろう。
部下は上司を選べない
「社員がいかに能力を発揮するか」という観点で考えると、上司は大きなポイントである。上司は部下を選べるが、部下は上司を選べない。人事担当者の立場で見ても、上司、部下共に力量はあると思われるのに、互いの相性が悪いために働く意欲を失っている例は少なくない。もちろん部下が意気消沈する例が多い。
中高年社員で言うと、昨今は、過去の部下や後輩が自分の上司になる場面も少なくない。第一生命が主催しているサラリーマン川柳にも、
「俺の部下 いつの間にやら 俺が部下」
「教え子が 上司になって 倍返し」
などの作品がみられる。この背景には、年下の上司と年上の部下とのぎくしゃくした関係も透けて見える。
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