年に1度、自分が行きたい部署を申告できる制度がある会社も多いが、自己申告書には、次に行きたい部門や取り組みたい仕事の欄はあっても、「どんな上司と一緒に仕事がしたい」とか、「誰とは一緒に働きたくない」と書き込む欄はない。
部下が上司を選べる仕組み
私が人事担当だったとき、「部下が上司を選べる仕組み」を考えていた。
たとえば、東京地区の20人の支店長と、彼らの下で働く営業所長をひとつの会議室に集める。集めるのは、同じ営業所に3年以上在籍している営業所長。私の勤めている会社では、翌年度の転勤対象者である。そしてその場で、自分の上司になる支店長を選ばせればいいのだ。
初めに各支店長が、「自分は、このような支店運営を行いたい」「営業所長には、このような働き方を期待したい」といった内容のプレゼンを20分程度、実施する。それを聞いた営業所長たちは、自分が一緒に働きたい支店長のところに集まる。
多くの希望者が集まった支店長は、希望者と直接に交渉して、自分の配下となる営業所長を選ぶことができる。一方で、希望者が集まらなかった支店長は、ほかの支店長の面接を落ちた営業所長の中から選ぶ。これらはすべて、当事者同士の個別交渉になる。
ここで大切なポイントは、どの支店長が何人の営業所長を集めたという事実ではなくて、相性の合わない上司・部下が生まれるリスクを排除できるということだ。
人は20分間、直接相手の話を聞けば、その人が自分とウマが合うか合わないかくらいは、かぎわけることができる。同時に、その人の下で自分の持ち味を生かせるかどうかもわかる。うまく言葉にはできなくても、そういった直感は誰もが持っている。
しかも営業所長は、制約はあるとはいえ「上司を自分で選んだ」ことになる。いちばん人気のある支店長は避けて、次順位の支店長のところに手を挙げることもできる。
また、支店長同士の部下選択では、自由競争の仕組みを取り入れているので、文句は言えない。
たとえ人事部が膨大なヒアリングをして人事異動を組んでも、個々の社員間の相性によってうまくいかないことが少なくない。人事部から命じられた支店長の下で働くよりも、自分で選んだほうが、営業所長たちは頑張るのではないかと思うのだ。
当時は、この案は一笑に付されたが、私は本気でやれる自信があったのである。
一緒に働く仲間を選ぶ
上司を選ぶだけでなく、一緒に働く仲間を選ぶことがあってもいいだろう。営業のグループであれば、宝塚歌劇が好きな女性だけが集まったチームなどを作ることも考えられる。朝礼では、「♪すみれの花咲く頃」を歌っているかもしれない。
関西であれば、吉本新喜劇が好きな仲間だけで一緒に仕事をする手だってある。日々、いろいろなギャグがオフィスを飛び交うだろう。小さい頃から慣れ親しんだ楽しさを共有できれば、相性の問題はぐっと小さくなる。格闘技が好きなメンバーの営業組織も面白いかもしれない。目標が達成できなければ、「腕立て100回!」(笑)なんてことになるのだろうか。
とにかく、相性の合うメンバーと一緒に働くことは大切である。一緒に働く仲間も、仕事も、自分が選んでいるのだと思えば、組織や人とのもたれ合いも減少する。
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