極めて合理的だった中国の英語教育普及
中国は2001年に小学校の英語教育を義務化して以降、国を挙げて英語教育の普及と改善に取り組んだ。そして国民の英語熱は高まり、いまや大学生の8割近くが「自分の英語能力は日常生活レベル」と答えるほどになった。今回は、これまで紹介してきた中国の英語教育システムと比べ、日本には何が足りないのかを探っていく。
連載第1回(日本と中国「英語を学ぶ環境」の決定的な差 2020年7月7日配信)では、中国が小学校に英語教育を導入しようとした際、いまの日本と同様にさまざまな批判や反発があったことをお伝えした。その代表的なものが、「母国語の習得の妨げになる」「いったい誰が英語を教えるんだ」「英語を一生使わない国民がいて、資源の浪費になる」だった。しかし中国は今後のグローバル・IT社会を見据えて、「英語はこれからの国民的資質」と決め、英語教育の普及に取り組んだ。
中国の英語教育普及のやり方は極めて合理的だった。まず政府は大都市を中心とした地域では小学校1年生から、農村部など英語教育の遅れた地域では3年生からと授業の開始年を分けた。また、各地域にはそれぞれの実情に合わせた、カリキュラムの自由裁量を与えた。
これは多民族国家で教育の地域格差が大きいという事情もあったが、全国で画一的に普及させるより、地域の実情に合わせたほうが合理的だと判断したためだ。
また各地域でモデル地区・モデル校を設置して教育実験を行い、成功した先進事例を国内で広めるというPDCAサイクルを回した。
さらに中国は「英語のことは英語圏に聞け」と自前主義を捨て、イギリス政府などの協力を得て教員育成を行い、英語検定試験についてもイギリスと共同開発した。
中国では小学校入学前に3割以上の子どもが英語学習を開始する。一方の日本では、今年度から小学校5年生以上の英語教育を義務化したものの、日中の子どもが英語に触れる時間の差は歴然としている。
では日本の子どもは、どうやったら「中国並み」の英語学習時間を確保できるのか?
無料会員登録はこちら
ログインはこちら