アメリカ国務省は、英語ネイティブである国務省職員が外国に赴任する際、日常会話ができるようになるのに必要な時間を調査した。
言語的に英語に近いグループから遠いグループまでを4つに分け、一番近い「グループ1」にはフランス語、ドイツ語やスペイン語など。日本語や中国語は、最も遠い「グループ4」に振り分けられた。
各グループの日常会話ができるようになる時間は、「グループ1」では480時間。しかし「グループ4」は2400〜2760時間と「グループ1」の5倍以上の時間がかかり、なかでも日本語はいちばん長い2760時間であった。
「このデータから日本語話者が英語で日常会話をできるようになるのも、2700時間程度はかかるだろうと推測できます。しかも学術論文を書けるようになるには、この倍以上の5000〜6500時間はかかるだろうといわれています」
日本の英語の授業は小中高で計1000時間弱
こう語るのは国際バカロレア日本大使であり、東京インターナショナルスクールの理事長、坪谷ニュウエル郁子さんだ。
「そもそも語学の学習は、その言語によって脳が刺激されている時間に比例します。私たちは18歳になるまでに母国語の日本語に6万3000〜6万5000時間、接しているといわれています。だからこそ私たちは日本語を使えるようになるのですね。一方で英語については、日本の小学校から高校までの英語の授業は全部で1000時間弱です」
坪谷さんは「日本人は英語が下手なのではなく、そもそも英語に接している時間が絶対的に足りない」と語る。
「たとえばいま子どもが9歳なら、何歳までに2700時間を達成したいかを逆算して日数で割っていけば、1日当たりの英語の学習時間が算出されますね。さらに学習では主体的に関わっていくことが必要です。つまり読むだけではダメで、読んで書いて聞いて話す、と全部やらないといけません」
とはいえ、いまの子どもたちは学校だけでなく、お稽古事や習い事などとにかく忙しい。ここに英語も加われば子どもたちはパンク状態になるだろう。
そこで坪谷さんは、子どもが英語を効率的に学ぶための2つの提案をする。
「教育用語で『臨界期』といわれる9〜11歳くらいがポイントです。臨界期は言葉を1つの塊で覚えて、そのまま話せます。この臨界期をまたいで13〜15歳まで続けると、その言語は定着します。また、臨界期の前に覚えた言語は、音だけは何歳になっても発音することができます。身体が覚えているんですね」
つまり小学校低学年で音として聴かせて定着させ、さらに高学年で集中的に学ばせることが重要なのだ。
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