親子の会話は「子9割:親1割」がちょうどいい訳 コミュニケーション力が育ち「自分で決められる子」に

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これは、子どもと親の話す割合を示しています。会話の9割は子どもに話させてあげてください。親はその話を聞くことに徹し、残りの1割で返答をしてあげるのです。

子どもが話したいことを親が潰してはいけない

ところがこの原則、実際にやってみると難しいのです!

子どもの話は要領を得ない、あちこちに話題が飛ぶ、単語が出てこないなど、さまざまな理由で、忙しい大人には実際よりも何十倍もの体感時間を要するでしょう。

また、親は自分の子どものこととなると、「うちの子はこういう子だ」という先入観を抱いてしまいがちです。そのため、子どもが話し始めた段階で親の持つイメージをもとに、勝手に話の行き着く先を予想して聞いてしまう傾向もあるのです。

今回のケースでも、無意識のうちに「うちの子はきっとお城を壊されて泣いたんだろうな」「先生に言いつけに行ったんだろうな」などと、子どもが話す出来事を予想して、先回りしてしまう傾向があるのです。

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ですから、砂場での体験を話すわが子の話の途中で、「悲しかったね」「悔しかったね」「また作ろうね」といった返答をして、子どもの話を遮ってしまいがちなのです。

実は、ここがなかなか気づけない大きな落とし穴。

専門的な言葉を使うと、「認知バイアスによって、親が子どもの話をきちんと聞いていない」という例なのです。「認知バイアス」とは物事を判断する場面で、直感や以前までの経験に基づく先入観、他人からの影響などといった直接関係のない理由によって、論理的な考え方が妨げられてしまうという脳のクセのこと。

実は、よく話を聞いてみると、「壊れた砂のお城から探していた犬のおもちゃが出てきて嬉しかった」という結論となるかもしれません。

最後まで話を聞いてもらえなかった子どもからすると、「話を聞いてもらえなかった上に、悲しかったわけじゃないのに決めつけられた」「どうせまた言っても聞いてくれないし、わかってくれない」という思考回路に陥ってしまいます。こう考えると「バイアス」による決めつけ、意外と怖いですよね。

柳澤 綾子 医師、医学博士

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やなぎさわ あやこ / Ayako Yanagisawa

医師、医学博士。東京大学医学系研究科公衆衛生学客員研究員、国立国際医療研究センター元特任研究員。麻酔科専門医指導医。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。公衆衛生学を専攻し、社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを専門としている。エビデンスに基づいた最新の医療、教育、子育てに関する有益な情報を発信。自らも二児の母であり、データに基づく論理的思考と行動を親たちに伝える講演や記事監修、執筆なども行っている。現在は株式会社Global Evidence Japan代表取締役として、母親目線からの健康と教育への啓発活動も精力的に行っている。

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