20年も続いた漫才低迷期
楠木:『M-1はじめました。』を読んだときに、タレントや芸人による芸論というよりも、企業のプロジェクトについて書かれた本だと思いました。これに副題をつけるとすれば、「需要創造の物語」だなと。
新しい市場が出てきて、伸びている市場を取りに行く話はいくらでもあるけれど、それは商売として二流。やはり一流は自分で需要や市場を創造することです。ピーター・ドラッカーさんをはじめ、いろいろな人が経営は究極的には需要創造だと述べています。この本には、それを達成するまでの経緯が書かれていて、興味深く読みました。
谷:ありがとうございます。
楠木:今はメディアを通じて芸人のお笑いが生活のさまざまなところに入り込んでいる時代です。だから、漫才というジャンルが極めて停滞していた期間が20年も続いていたとは、想像がつきにくい人も多いですよね。
僕自身は過去の漫才ブームをリアルタイムで経験し、子どもの頃はツービートやB&Bなんかをおもしろく見ていました。それが、言われてみると、漫才が話題にのぼらなくなっていたなと。この本を読んで改めて気づきました。