M-1誕生ストーリーで学ぶ、「需要創造の極意」 経営学者が斬り込む『M-1はじめました。』

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令和ロマンの優勝で幕を閉じた「M-1グランプリ2023」。今回で19回目を数えるこの大会は、下火になっていた漫才を立て直すべく、元吉本興業社員の谷良一氏がゼロから立ち上げたものでした。
谷氏がM-1創設の裏話をつづった『M-1はじめました。』は、一つの新規事業の立ち上げ物語として読むこともできます。30万部を超えるベストセラーとなった『ストーリーとしての競争戦略』で著名な経営学者の楠木建氏が本書を読み、経営学的な視点から谷氏と語り合いました。
今回は前編をお届けします。

20年も続いた漫才低迷期

楠木:『M-1はじめました。』を読んだときに、タレントや芸人による芸論というよりも、企業のプロジェクトについて書かれた本だと思いました。これに副題をつけるとすれば、「需要創造の物語」だなと。

M-1はじめました。
『M-1はじめました。』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

新しい市場が出てきて、伸びている市場を取りに行く話はいくらでもあるけれど、それは商売として二流。やはり一流は自分で需要や市場を創造することです。ピーター・ドラッカーさんをはじめ、いろいろな人が経営は究極的には需要創造だと述べています。この本には、それを達成するまでの経緯が書かれていて、興味深く読みました。

:ありがとうございます。

楠木:今はメディアを通じて芸人のお笑いが生活のさまざまなところに入り込んでいる時代です。だから、漫才というジャンルが極めて停滞していた期間が20年も続いていたとは、想像がつきにくい人も多いですよね。

僕自身は過去の漫才ブームをリアルタイムで経験し、子どもの頃はツービートやB&Bなんかをおもしろく見ていました。それが、言われてみると、漫才が話題にのぼらなくなっていたなと。この本を読んで改めて気づきました。

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