谷:「漫才大計画」というイベントでは、吉本新喜劇の劇場でお客さんに残ってもらい、無料で漫才をしました。ただ、前座で漫才やアクロバットみたいなものがあり、新喜劇を観て3時間。もうお腹いっぱいで、「この後やりますから残ってください」と言われても、もうええわと帰ってしまう人が多くて。858人の劇場に100人くらいで、もちろんチケットも売れない。「base漫才計画」は小さい小屋なので、お客さんが入りましたが。
楠木:baseにはもともと熱狂的ファンがいましたよね。それで、やる側に大きなヒノキ舞台を用意したと書かれていました。
谷:baseには、普通の興行で一生懸命漫才をやっている、おもしろい若手を出演させました。そして、ここで反応の良かった芸人を「大計画」にも出すようにしました。ふつう若手はヒノキ舞台に立てないので、そこは喜びだったのかもしれません。
楠木:大計画には、大木こだまひびきなど、中堅も出ていたんですよね。
谷:そうです。中堅を出して、その前の2組、3組は若手を出しました。
楠木:そこから時々、テレビの番組で新しい企画が出てきたと。
谷:そうです。関西で一番後発のテレビ局のテレビ大阪が年2回特番をやっていました。3月にオンエアしたら視聴率が良かったので、またやりましょうと。僕らも売り込みにいって、「めっちゃ!漫才」という番組をつくってもらって、これがすごくよかった。漫才大計画で受けた若手や中堅のコンビを優先的に出しました。そうやって、漫才自体の世間の認知度がゼロに近いところから、10から15くらいになりました。
ボトムアップのアプローチで土壌を整備
楠木:ボトムアップのアプローチですね。現場の人たちの考えや声を聞いて、だんだん広げていく。M-1で真剣勝負をやるようになったのは、「めっちゃ!漫才」を放送した後でしょうか、その前からでしょうか。
谷:少し後です。島田紳助さんと楽屋で漫才の話をしたときに、「若手コンテストをやろう」と言われたのです。上方漫才大賞、お笑い大賞、ABC漫才コンクール、NHK漫才コンテストとか、すでにいろいろあった。正直、ありきたりやなと思ったのですが、そこは紳助さんのすごいところで、賞金を1000万円にしようと。新人賞で10万円が相場の時代に2桁違うのはすごいな、何かが起こせるかもしれないなと思いました。