オリエンタルラジオの中田敦彦さん家族が移住してきたことで話題のシンガポール。私は夫の駐在に帯同してきて、この春で在住5年目を迎えた。
シンガポールにいると非常に多国籍の人と出会い、世界中で住む場所を選べるようなグローバルエリートに「なぜシンガポールで働くことにしたか」と尋ねると、かなりの確率で「教育のため」「子どもを育てる環境がいいから」との答えが返ってくる。
中国や韓国から、父親を置いて、母と子だけでシンガポールにやってくる「母子留学」の事例もある。日本人の間でも近年、生活費や教育費が割高であるシンガポールでも、母子留学の事例が広がりつつある。
シンガポールでインター校の紹介を手掛けているカルチャーコネクションの岡部優子社長は「(2021年5月の直近ではシンガポールも再び市中感染が確認され規制が厳しくなっているが)コロナ禍でも、シンガポールへの母子留学や移住は増えています。背景としては、他の国の魅力が落ちているという面も。昨年欧米への留学や移住を考えていたけれど、コロナで対面通学ができないまま1年が経ってしまったので行き先をシンガポールに変えたというケースもあります」と話す。
シンガポールは治安がいい、メイドさんを雇うことができる、アジア人にとって暮らしやすい……などもあるが、教育の内容についても評価が高い。ただし、ここでよく混線しがちなのだが、これほどまでに魅力的な「シンガポールの教育」には、大きく2種類ある。
ひとつは欧米系の人たちが通わせているインターナショナルスクール。一時的な滞在である駐在組や新規移住組が子どもを通わせるのは、こちらが多い(日本人の駐在組は日本人学校という選択肢も)。
もうひとつが、地元のローカル校。国際学力比較の指標としてよく報道される学力調査PISAやTIMSSなどで好成績を残しているのは、実はこちらのほう。
ローカル校は基本は中国語、マレー語など英語以外の「母語」を履修するというハードルがあるほか、自国民が優先的に入ることができ、外国人にとってはそれなりの費用もかかる。しかし、ジム・ロジャーズ氏が子どもをローカル校に通わせているといった著名人の事例もあり、永住権取得者などを中心に人気がある。
【2021年5月11日17時20分】記事初出時、言語科目の記載に誤りがあり上記のように修正しました。
人に投資するしかなかったシンガポール
ここでは後者のローカル校の状況を見ていこう。シンガポールの教育システムを理解するには、その国の成り立ちからひもとく必要がある。シンガポールがマレーシアから独立したのは1965年。「独立」と言うと勝ち取ったイメージがあるが、シンガポールの場合はそうではない。
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