※ その1:愛国心でも愛郷心でもない、日本人の教養
※ その2:今の日本人は“情”が欠如している
※ その3:若者に日本の歴史をどう教えるべきか
安西:私は小中学校で、日本の原風景からの歴史をある程度教えていくべきだと思います。その一方で、日本の若い人たちが自分からそういうことを知りたいと思う環境を作ってくことも大事だと思います。そうでないと本当の血肉になりにくい。
それにはいろいろなやり方があって、例えば外国に出ると、そうした歴史を勉強したくなりますし、中国、韓国の人たちと話をすればむしろ日本について知りたくなります。いわゆるグローバル化と日本人としての教養は、決定的に結びついていると思っています。
山折:これから大国のアメリカや中国と付き合うときに、日本における政治権力の交代のあり方について根本的に知っておく必要があります。私よく言うんですが、明治維新というのは無血革命なんですね。もちろん、戊辰戦争などで犠牲者は出ていますが、フランス革命やロシア革命に比べたら比較になりません。
なぜあんな無血革命が可能だったのか。そのことに注目したのが、イギリスの歴史家のトインビーや、『文明の衝突』で有名なハーバード大学のサミュエル・ハンティントンです。しかし、彼らが持つ疑問に対して、日本の歴史家、思想家ほとんど答えることができていません。
なぜ無血革命が成功したか。その背後にあるものはやっぱり日本の歴史1000年にわたって育んできたある種の日本パターンの平和主義だと思うんですね。戦後60年の歴史がある意味でそれを実証しているとも思う。けれども、そういう文脈で明治維新を分析するということを誰もやらない。これも悲しいことなんですよね。
だから依然として、日本の教育は、戦後の近代史観とマルクス史観に方向づけられたり影響されたりしている。
安西:全くおっしゃる通りだと思います、私は、明治革命、明治維新は、封建制度から近代へというような、ヨーロッパ諸国をそのまま当てはめられるような変化ではない、と理解してきました。やっぱり1000年の歴史のその延長線上に明治維新があったということだと思いますね。
山折:そうですよね。具体的には、平安時代の350年、江戸時代の250年、まさに平安の時代だったわけです。こんな長期にわたる平安の時代を実現した国は世界で日本だけですよね。そういうことに歴史家は興味や関心を持たない。日本の歴史家や政治家が好きなのは、革命、戦国時代ですよ。本当に水準が低い。
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