「日本社会」と「西洋社会」の決定的な違い 山折哲雄×安西祐一郎(その4)

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実は、他人を信じない日本人

――大地を感じるという意味でも、自然と一緒に育つことは大事でしょうか? 都心では高層ビルが増えて、ずっと高層マンションで育つ若者が増えていますが、田舎で自然と共に育つ期間というものが、大地を感じるために必要でしょうか?

山折:それはそうでしょう。ただ私が言う大地性というのは、安西先生がおっしゃる大地と、もしかすると違うかもしれません。インドのような乾燥地帯の大地と、湿潤地帯の日本列島のような大地では、風土としての生活が違うような気がしますね。

安西:大地というと、なんとなくこう赤茶けた感じがしますが、そういう意味ではなくて、森があって水があって、日本の場合には豊饒な海もあって、それが一色、一つではなくて重なっているというイメージでしょうか。

私は一応理系出身ですが、大学を出るころからだいぶ心理的な問題をいろいろ考えるようになりました。原発の問題にしても何にしても、どういうふうに人と関わるか、組織の中での媚びへつらいから何から何まで、人間としての判断基盤がほぼ抜け落ちてしまったことが、大きな原因だと思います。

心理学の分野に、安心できることと信頼できることはどう違うのか、という研究があります。本人だけでいると安心できる、何も言わなくてもわかるような気がする、という面がある一方、個人主義といわれる国の人々よりもむしろ日本人のほうが他人を信用しないという研究結果もあります。個人主義の国の人たちのほうが他人を信じる。それに対し、一様な背景を持つ人たちが暮らしている場合に他人を信じない傾向があるのではないかということです。

どういう時に人は信じられるか、誰を信じるか、の判断ができることも一つの教養です。特に現代社会ではいろいろな情報が飛び交っている中で、誰の言っていることをどういうふうに信頼でき信用できるかですね。このトレーニングをすることは、教養を身につけていくことと似ているなという気がしますね。

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