林野庁の女性漫画家、今日も森の魅力を描く

自分らしく、好きなことを仕事にする方法

登山のペースを落として風雨をしのぐように、平田さんは月1回の『林野-RINYA-』での漫画連載を3カ月に1回にするなど業務量を調整しながら、心身とも限界寸前のところで仕事と家庭を両立させていた。

崩れ落ちそうな山道をひたむきに登る平田さんを見て、組織が動く。

「自分もかなりしんどくて、子どもたちも限界にきていました。そんなときに、上司がテレワーク(在宅勤務)を認めてくれたのです。週に1回でも子どもたちを朝1時間ゆっくり寝かせてあげたり、帰りも1時間早く迎えに行ってあげたりできるようになり、それが本当に支えになりました」

登山の最中、崖っぷちに立ち、吹きつける風雨で足元がぬかるみ始めたそのとき、平田さんに職場から助けの手が差し伸べられたのである。

周囲の支えも受けて、仕事と家庭を両立させている

「広報室はずっと電話が鳴り続けているので、書類を整理したり情報誌の原稿を描いたり、電話が鳴らないときにこそ集中してできる仕事を、テレワークの時間にやらせていただけるようになりました。職場の方々に本当に感謝しています」

職場の仲間たちは、平田さんが描く絵のファンであり続けたばかりか、応援団にもなってくれた。

「漫画の連載は昨年1年間に12回描いたことで、本当にいろいろな方々から反響をいただきました。『これ、いいね! ここでも使わせてもらっていい?』と声をかけられると、『じゃあ、もう1日頑張ろう』『あと1カ月頑張ってみよう』『できるところまで頑張ってみよう』と思うことができました」

誰しもつらくなるときがある。限界が来るときがある。そんなとき平田さんはこう言う。

「内にこもって自分だけを責めていると、絶対にいい方向には行かないと思います。何とか、一歩でもいいから外につながりを求める。そこで声を出せば、誰かが聞いてくれるし、どこかにつながることを学びました。声を挙げること、それが大切だと思います」

平田さんは大好きな絵を描くことを仕事にしていったように、仕事と家庭の両立に際しても、恥ずかしがらずに声を上げて、仲間を巻き込み、助けを得ていったのである。

私が林野庁を辞めない理由

子育てで追い込まれたとき、平田さんはこんな風に思ったこともあった。

「本当につらかったとき、子どもたちに『お母さん、仕事辞めていい?』と聞いてしまったこともありました。すると、子どもたちは『お母さん、頑張って続けて』って言ってくれたのです。私が今の職場や絵を描くことが好きだとわかってくれているので……」

子どもたちの応援以外にも、平田さんが辞めずに林野庁で働き続けたいと思う理由がある。

「この組織の中にいると、たくさんの魅力的な人たちに出会えます。それに、この組織にいるからこそ、個人で発信するよりもはるかに多くの方々に森の出来事や林業について知ってもらうことができると思います。それを途中で投げ出すのは、悔しいし、何よりもったいないと思うのです」

置かれたライフステージによって、歩みが遅くなることもある。しかし、平田さんは、辛抱強く困難を乗り越えて人生という山を登り続ける。

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