「辞めなきゃやりたいことができない」のウソ
「会社のような所属組織ではやりたいことができない」。そう言って組織を去っていく者は後を絶たないが、本当にできないのだろうか。確かに、まっクロクロの “漆黒企業”にでも入ってしまったなら話は別だ。しかし、ストレスを溜めている人たちの声を聞けば、自分自身の「勤力(きんりょく)」が不足していたために、組織に不自由を感じているというケースも少なくない。
では、ここで言う勤力とはいったい何か? お察しの通り、「筋力」にかけた造語であり、私が自著『勤力を鍛えるトレーニング』(略して『勤トレ』)で「仕事ができる力」と定義している能力のことである。
ここで自由と勤力の関係について、もう少しわかりやすく説明しよう。たとえば、40キログラムのダンベルしか持てない筋力の人が、50キログラムを持とうとすると苦しいし、思うようにいかない。しかし、筋力がつくに従い、人は50キロでも楽々と持ち上げられるようになる。
ビジネスもこれと同じ。難度40の仕事しかできない勤力の人が難度50の仕事を与えられると、不自由で苦しく感じるものだ。実際まだ40の勤力しかないのに、100の勤力が必要な仕事をさせてもらえずに「ムキーッ!」となったことはないだろうか。しかし、始めから難度100の仕事ができる勤力があれば、わざわざ一回会社に入って辞めるようなコースを歩まず、最初から起業すればいいという話。
実際に勤力が伴っていないのに、組織を逃げ出し、いかにも仕事ができそうな肩書きを付けるのは、“セルフブランディング”ではなく、上辺だけを華やかに飾る“セルフコーティング”であると私は思う。最初は人の目を欺くことができても、メッキが剥がれた瞬間、不自由に逆戻りだ。
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