元「負け組」社員が3万人のSE改革を担うまで 巨大組織・富士通を乗りこなす男の変人哲学

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 「起業」という言葉は、起業家のためだけにあるものではない。「業(なりわい=仕事)を起こすこと」は、組織の中でもできる。いやそれどころか、新しいビジネスを生み出さなければならない組織人にこそ必要とされるアクションだろう。
 さあ立ち上がれ組織人。今、あなたの立場で、業は起こせる。それも、上手にやれば大規模に。本連載では、会社をはじめとする「大組織」で、“変わり者”だと思われても“変えること”に挑み、新たな仕事をつくり出す「組織内変人」を紹介する。
富士通グループで異色の地位を築いていった柴崎氏。その道のりはどんなものだったのだろう(写真:今井康一)

2014年12月中旬、東京・目黒のHub Tokyo。ここで開催されたのは、「あしたのコミュニティーラボ」と「ライフハッカー日本版」のコラボレーションイベントだ。

参加者である60人の学生たちの熱い眼差しの先には、モデレーターを務めるライフハッカー日本版編集長・米田智彦さんと4人の登壇者がいた。ゲスト4人中3人がベンチャー企業の代表。そこに1人、17万人の社員が働く巨大組織・富士通に籍を置くビジネスパーソンが混じっていた。

その男の名は、柴崎辰彦。社会を動かすイノベーターたちと学生をつなぐ、このイベントを仕掛けた張本人でもある。

社内外の“2つの顔”

柴崎さんの富士通での肩書きは、「インテグレーションサービス部門戦略企画室長」。文系出身ながら、現在はグループ約3万人のSE(システムエンジニア)に関する戦略立案業務を担う。

そしてもうひとつの顔。それが2012年4月に創設した「あしたのコミュニティーラボ」の代表だ。ここではインターネットやイベントを通じ、地方自治体や企業、NPOなどの組織と、さまざまな技術とアイデアを持つSE、学生などの人材をつなぎ、社会的課題を解決することに取り組んでいる。実際ここから、2015年1月末時点で約30のプロジェクトが発生している。

普段は「縁の下の力持ち」で特に目立つ存在ではないものの、会社の内外で日々自らの「やりたい」を追求している柴崎さん。順風満帆の会社人生活を送ってきたのかと思いきや、実はそうでもない。まして最初から「人をつなぐ仕事」を構想していたわけでもないという。

柴崎さんに転機が訪れたのは30歳を過ぎたころ。係長への昇進を見送られる出来事を経験したのだ。当時は落ち込みに落ち込んだそうだが、逆にその出来事が、柴崎さんに「扉」を開けさせるきっかけになった。

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