戦後の日本は、焼け野原でモノやサービスが乏しかった。そして1990年まで人口は増加の一途。企業にとっては、作れば売れる入れ食い環境だ。ところが、モノやサービスが飽和すると、当然のことながらつくっても売れなくなる。バブル崩壊以降、待っていれば切り分けられた仕事がもらえる時代ではなくなった。
仕事をりんごにたとえると、かつては1人では到底さばききれないくらい大量のりんごが坂道(=右肩上がりの経済)をゴロゴロと転がり落ちて来た。それを拾う人、皮をむく人、切る人、お皿に盛る人、配膳する人に分かれて個人が任務を遂行していた。
しかしりんごが転がってこないなら、タネを植えるしかない。今あちこちでイノベーションという言葉が聞かれるように、自ら仕事のタネを植え、新しいビジネスを作ることができる人材が必要とされるようになっているわけだ。
さあ、「組織内変人」探しの旅に出よう!
そうしたイノベーティブな人材は、既存のルールから外れたことをするため、従来型の環境で育ってきた人には“変わった人=変人”に映るかもしれない。しかし、“変人”を自動詞読みすれば、“変える人”である。
組織にとって、変人は決して従順な存在ではないだろう。だが、私は思う。変人とは、20世紀から21世紀にかけて大きくビジネス環境が変化している中での適応種であると。
組織と個人の関係も変わりつつある。また、変わらなければならないと思う。組織が個人に仕事と報酬を供給し続けられた時代は、組織が「主」、個人が「従」の「主従関係」が色濃くなる傾向にあった。そして、会社に身を捧げる社員のことを揶揄して「社畜」という言葉も生まれた。
しかし、今や個人が組織を使って成長し、その勤力で得た新しい仕事と報酬を組織に還元しなければ、相互に存続し得ない時代になっている。組織が個人に恵みを与え、恵みを与えられて育った個人が組織に恵みを返す。21世紀は、この相互利益を反復させる関係である「互恵関係」の構築が必要な時代になっているのではないだろうか。
かくして、組織にとって都合のいい量産型取り替え可能人材の時代は終わった。もはや「組織人=同質」ではない。本連載では第2回以降、組織の中で変化を起こしている具体的な変人たちを紹介していく。
彼ら彼女らは、今どのような仕事に取り組んでいるのか。どのようなキャリアを経て、変人へと進化を遂げ、現在のビジネスライフを充実させているのか。はたまた、どのような変人哲学を持っているのか。この連載を通じて、その全貌に迫る。
さあ、お待たせしました。それではさっそく、次回ご登場いただく変人さんをチラ見せしよう。
言わずと知れた日本の巨大IT企業で、3万人に上る社内SEの大改革に挑む男。30歳で落ちこぼれた彼が、会社で唯一無二のポジションを作り上げていくストーリーをお届けする。
合い言葉は、変人ウォッチ!
※ 次回掲載は1月30日(金)です。お楽しみに!
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