自然豊かな北海道で生まれ育った平田さんは、野生動物や生物学に興味を持つようになり、大学も農学部森林学科に進学。そこで、きのこの研究にいそしんだ。
「大学での研究はすごく楽しかったのですが、勉強すればするほど実際に森の中で起こっていることを、もっと多くの人に知ってほしいと思うようになりました。たとえば、みなさんは『きのこ』というと『食べるもの』くらいのイメージしか浮ばないですよね? でも、きのこは森の生態系の維持や保全に大きく寄与している陰の立役者なのです」
普段は森の暗がりの中で、人知れず一生懸命働いているきのこたちに日の目を見せてあげたい。そんな思いを膨らませて、平田さんは林野庁に入った。
入庁後に平田さんは、利根沼田森林管理署(群馬県沼田市)、静岡森林管理署(静岡県静岡市)で森林官を経験。全国の国有林の保護管理の最前線である森林事務所3カ所で勤務し、森林を守り育てるための調査や管理を行ってきた。
そうして国有林の現場で多くの人と接するうちに、平田さんはきのこだけでなく、人知れず森や人のために真摯に働いている人たちのことも、もっと広く伝えたいという思いを募らせていった。
「この地域でこんなふうに林業や森のことで頑張ってる人がいるんだ」「面白そうだから自分も行ってみたいな。何か協力できることがないかな」。そう思ってもらえるようなことをしたいという気持ちが膨らんでいった。
やりたかったことを、仕事に結び付けてみよう
そして、平田さんは小学校の頃からずっと好きだったこと、やりたかったことを仕事で提案しようと思い立った。
そう、それが「絵を描くこと」だった。
平田さんが群馬県の相俣森林事務所に森林官として配属されたとき、ちょうど全国で初めて、国有林を林野庁だけでなく、地域協議会や自然保護団体と一緒になって管理しようとするプロジェクトがスタートし、月に1回、サポーターが集まる機会があった。
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