平田さんは画力も漫画家並みだし、行動力も漫画家のようだ。出版社に「持ちこみ」を繰り返す漫画家のタマゴのように、つねに自分が描いた挿絵や漫画を持ち歩いて人に知ってもらう努力を重ねてきたのだ。
「あるとき、絵を見せたら、『あなたはどのようなお仕事をしているんですか?』と聞かれることがありました。『公務員です』と答えたら、『えっ? 公務員って堅いイメージだったけど、こういうことをやっている人もいるんですね』と驚かれ、そうした会話がきっかけで仲良くなってくださる方もいらっしゃいました」
かつてカナダの伝説的なアイスホッケー選手、ウェイン・グレツキーは言った。
「You miss 100% of the shots you don’t take. (打たないシュートは100%外れる)」
打たないかぎりシュートは入らない。勇気を出してシュートを打ってみれば、思いも寄らなかった反応が得られるものである。
突然の嵐、夫が転勤で単身赴任に
山の天気は変わりやすい。人生も万事順調だったかと思うと、急に困難が立ちはだかるときもある。持ち前の技術と行動力で快調に山を登り進めていた平田さんを、突然の荒天が襲う。
林野庁広報班で平田さんは、週2回の大臣の定例会見、メディアの取材対応、大臣賞や長官賞の交付などの業務に加えて漫画の執筆を行っていた。一方、家庭では2児の母として育児に奔走していた。そんなときに、突然家事と子育てを分担してくれていた夫の転勤が決まったのだ。それは、今年4月の出来事だった。
「正直、今がいちばんつらいかもしれません……。夫も忙しい中、週末には東京に帰ってきて家事や子どもの面倒をみてくれます。ですが、平日は家事と仕事と育児を全部ひとりでやらなければなりません。子ども2人を朝6時に起こして、朝の1時間に分刻みで自分の支度を並行してやりながら2人の歯を磨いて、2人の服を着替えさせて、2人を保育園に送り、電車に飛び乗って……」
もちろん、仕事が終わったら、またすぐに子どもを迎えに行く。
「9時までに寝させるために、ご飯を作り、お皿を洗い、お風呂に入れて、子どもたちを布団に入れて寝かしつけたら自分も一緒に倒れ込むように寝てしまって……。また深夜2時に起きて、残った家事や仕事をするという繰り返しでした」
必死にこらえようとしながらも、インタビューに答える平田さんの目には涙が浮かんでいた。
「ギリギリの生活が続くと、週の後半には家事がたまって家の中はぐちゃぐちゃになっていくし、子どもたちもどんどん疲れて、朝も泣きながら起きてくる。この数カ月は化粧や髪を整える時間もなく、『今日家を出られるかな』と思いながら、気がつけば子どもたちに『ごめん、こんなお母さんでごめん』と泣きながら言っているような状態でした」
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