子どもに「夢を持て」と言う前にすべきこと 未来に続く「土台」を用意できていますか?

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「希望学」という研究調査でも、希望を持つ子は、その後、活動範囲が広がったときに、自分のやりたいことに出会う可能性が高く、結果として「夢」を持つに至るといわれています。

こうしたことから、私は多くの保護者の方々に対し、子どもに希望を持たせるための3つのことをよくお話してきました。

希望を持たせるための「3つの視点」

・子どもの好奇心に対して制限を加えない

子どもの好奇心は計り知れません。生命の危険が及ぶこと、自他を害することに対して制限することは当然ですが、子どもが興味関心を示したこと(例えば、昆虫、動物、料理、パソコン、モノづくり、各種スポーツ、さらには歴史、そろばん、音楽などなど)に制限を加えたり、無理にやめさせたりはしないほうがいいでしょう。このような好奇心が子どもの中で原動力となって、自信をもち、希望を持てる人間へと成長させていきます。希望の芽が出ようとしている上を“コンクリート”で覆わないことです。

・子どもの能力に限界をつくらない

子どもの成績表をみて、「うちの子は、これぐらいまでしかできないから」と親が知らずのうちに天井を決めてしまっているということがあります。例えば5段階評価で3であれば、口ではもっと上の成績を取って欲しいといいますが、心の中では、うちの子は中ぐらいという意識があったりします。そうすると普段の言動がそれなりになっていきます。

「子どもには可能性が無限大にある。うちの子も同様である」と信じてあげることが大切でしょう(ただし、過大な期待をかけてプレッシャーを与えることは逆効果になりますので、そこは注意が必要です)。希望の芽を小さい箱で覆わないことです。

・勉強に関しては、失敗や間違いにフォーカスせず、「何が学べたか」にフォーカスする

よくあるパターンとして、「テストで点数が悪い→親は怒る、または嫌味を言う→ 子どもは頑張ったフリをするか、諦める→ さらに悪化」ということがあります。これは子どもの「できていないこと」に焦点を当ててしまっているためで、親の心の中で「怒りや不満」という感情がたまり、爆発しかねません。

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しかし、「学び=成長は、失敗や間違いから生まれる」ものです。怒るかわりに「何が学べたか、次はどうすればうまくいくか?」ということにだけ焦点を当てるようにするのです。やがて「自分はできる」と実感でき、自信が生まれ、希望がでてきます。希望の芽を摘み取らないことです。

以上の3つがなされたなら、あとは放っておくことです。あれこれ余計なことはせずにいれば、子どもは自分で希望の芽を真っ直ぐに伸ばしていきます。

「夢を持つ=なりたい職業を持つ」ということはとても素晴らしいことです。しかし具体的な職業上の夢を持たない子に対して、急かして何か決めさせようするよりも、まずは希望を、つまり自分にもできるかもしれないという期待感を持たせていく方が自然な形ではないかと思います。

このようにして育った、自分自身に希望を持つ子どもたちは、やがて将来の目標を見つけ、さらには実現させるための手段もたくましく見つけていくことでしょう。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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