1つめのケースは、Mさんです。
Mさんは43歳のときに35年ローンでマンションを購入しました。
夫婦と子ども1人の3人家族で、それまでは郊外で月10万円弱の賃貸暮らしでしたが、「家を買えば資産が残る」と考えたのです。
返済額は月11万円ほど。メーカー勤務のMさんは「これくらいなら返済していける」という自信がありました。
管理費、修繕積立金、固定資産税等を加えて、実際には年185万円(月15.4万円)ほどの支出でした。
「予期せぬことの連続」で、ローン支払いが重みに
しかし、Mさんは50代を目前にリストラに遭ってしまいました。
再就職を余儀なくされ、年収は大幅にダウン。
当時は子どもの学費負担が重なり、家計は火の車だったそうです。
それでも現役時代は懸命にやりくりして凌いでいましたが、定年退職後はどうにもなりません。
体調の悪化でフルタイムでの就業も難しく、わずかな退職金もすぐに底をつきました。
返済が終わるのは78歳。さらに「修繕積立金の値上げ」という追い討ちもありました。
「これではとてもやっていけない」と、Mさんはマンションの売却を決めたのです。
売却前は住宅ローンの残債を精算できるかが心配でしたが、結果的になんとかトントンに収まり、借金は残りませんでした。とはいえ、当初考えていた「家を買えば資産が残る」とはなりませんでした。
賃貸アパートに移ったMさん夫妻は「無理せず、賃貸のまま老後資金を貯めればよかった……」と後悔しているそうです。
住宅金融支援機構によれば、近年の住宅ローン破綻率は3%程度。
これは決して少ない数字ではありません。
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