ランダム性を利用して市民を権限のある地位に就けることを、「くじ引き制」という。くじ引き制の提唱者のうちには、選挙は完全に廃止し、くじ引きによる統治を導入するべきだ、と主張する人もいる。
だが、この提案には多くの問題がある。まず、民主的な選択がなくなる。そして、核実験禁止条約の交渉といった政治課題の一部には、キャリアを通して培われる特別な専門技術・知識を必要とするものもある。
とはいえ、くじ引き制はそっくり退けるべきであるということにはならない。むしろ、公職者を選ぶためではなく、公選議員に助言をするために利用するべきだ。
「市民議会」を開催することの意義
以下のようにすれば、うまくいくだろう。政治の分野では、クレロテリオンをコンピューター化したバージョンで参加者を選ぶ、大規模な市民議会を毎年開催する。
有給の陪審制度を強化したようなもの、と考えればいい。議員の任期は1年だ。議会はたとえば、公選議員の情報提供を受けたりしながら、その年に取り組むべき大問題を10ほど選ぶ。ある年には、気候変動や税制改革、次の年には健康問題や運輸といった問題が選ばれるかもしれない。
それに加えて、公選議員は市民議会に迅速な助言的意見を求めることもできる。立法機関で緊急に討議されている、イエスかノーかの問題に答えるような意見を求めるのだ。
パンデミックの間、混雑した公共空間でマスクの着用を法律で義務づけるのは、良い考えだろうか? シリアに爆撃を加えるべきか? ついにグリーンランドを買収する時が来たのか? という具合だ。
市民議会は、公選議員が得ているのと同じ専門家の意見や助言を得ることを許される。市民議会の議員は、問題について議論してから、公開の助言的意見を出す。公選議員はその助言に従う義務はないが、ランダムに選ばれた人々の知恵が誰の目にも映る。
もし政治家がそれとは違う見方をしていたなら、彼らは少なくとも、市民議会が提案した解決策を採用しない理由を説明しなければならない。
これと同じようなモデルは、多国籍企業から警察署まで、どんな大規模組織にも採用できるだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら