横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
子どもたちが顔写真だけで船長を選ぶと?
私たち人間は、間違った理由から間違った人に権力を与えてしまうのかもしれない。
2008年にスイスの研究者たちが、実験を行ってこの仮説を検証した。
彼らは、5〜13歳の地元の子どもを681人集めた。そして、コンピューターのシミュレーションをするように求めた。
そのシミュレーションでは、これから航海に旅立つ船について、決定を下さなければならなかった。子どもたちはそれぞれ、画面に表示された2つの顔に基づいて、自分のデジタルの船の船長を選ぶ必要があった。他には何の情報も与えられなかった。
こうして、子どもたちがやむをえず選ばなければならない設定になっていた。どんな顔の人が、良い船長に見えるか? 想像上の船にとって、誰が有能な指導者になりそうに見えるだろうか?
子どもたちは知らなかったが、船長候補の2人は、ただランダムに選んだわけではなかった。じつは、フランスの国民議会選挙で争ったばかりの政治家たちだった。
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