なぜ「邪悪な人間」をリーダーに選んでしまうのか 「穏当な現状維持」がいずれ組織を腐らせていく

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怒りをぶつける男性
もともと支配欲の強い人が権力の座に就きやすい上に、私たちは表面的な理由で不適切な人をリーダーに選びがちです(写真:freeangle/PIXTA)
横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』について、中央大学教授で社会心理学者の安野智子氏に話を聞いた。2回にわたってお届けする。

増加する権威主義体制

なぜ悪人が上に立つのか: 人間社会の不都合な権力構造
『なぜ悪人が上に立つのか: 人間社会の不都合な権力構造』(東洋経済新報社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

『なぜ悪人が上に立つのか』は、私たち自身が、良きリーダーをどう主体的に選んでいくのかということを問題提起し、多くの知見と事例から検証した非常に意欲的な一冊です。

この邦題がとても良いと思うのですが、原題"Corruptible: Who Gets Power and How It Changes Us"は「権力は腐敗しやすい:誰が権力を握るのか、権力は人間をどう変えるのか」という意味です。それに対する答えがこの邦題にある「悪人」であり、「悪人が権力を求めやすく、権力を握ると人は悪人になりやすい」ということになります。

現在、権威主義体制や独裁的な政治家の存在が、世界的に多くの人の不安を呼び起こしている状況だと思います。

世界の民主主義の状況についてまとめているV-demレポートでは、権威主義体制の国に住む人の人口が増加している(2003年には世界人口の50%が該当していたのが、2023年には71%まで増えている)ことが報告されています。

権威主義体制の増加と民主主義の衰退の背景には、グローバリゼーションや経済格差、SNSなどを用いた情報操作などがあることが指摘されてきました。

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