なぜ「邪悪な人間」をリーダーに選んでしまうのか 「穏当な現状維持」がいずれ組織を腐らせていく

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しかし独裁者は国家だけの存在ではありません。私たちが日常的に接する組織、たとえば企業やコミュニティのようなところでも、「独裁者」と呼ぶべき人たちがみられることがあります。

高圧的な上司や傲慢で強引なトップというのはどこにでもいるのではないでしょうか。フェアで高潔、賢明なリーダーのほうがむしろ少ないような気さえしてしまいます。なぜふさわしくない人間が権力を握ってしまうのでしょうか?

本書では、4つの仮説を提示しています。第1に、もともと支配欲の強い人が権力を求めやすい傾向にあること。第2に、リーダーを選ぶ側が、表面的な理由で不適切な選択をしてしまいやすいこと。第3に、権力の座に(特に長期間)就くことで、人は腐敗していくこと。この3つの仮説は「なぜ悪しきリーダーが生み出されてしまうのか」に関する仮説です。

そして第4に、「権力の腐敗しやすさは制度によって変わる」という仮説も示されています。これは「制度を変えることで権力の腐敗を防ぐことができる」という可能性を示唆しています。

支配欲の強い人が権力の座に就きやすい

第1の仮説、「もともと支配欲の強い人が権力を求めやすい傾向にある」ことについて考えてみましょう。

アメリカの心理学者マクレランドは、人間の主要な欲求を、目標の達成を目指す「達成欲求」、周囲との良い関係を望む「親和欲求」、他者を支配したがる「権力欲求」、リスクを避ける「回避欲求」に分類しています。この中で言えば、権力欲求の強い人が他者の上に立ちたがる傾向にあります。

この権力欲求に「ダークトライアド」と呼ばれる性格傾向が加わると、さらに面倒なことになります。

「ダークトライアド」とは、目標のためには権謀術数をいとわない「マキャベリズム」、傲慢で他人からの賞賛を求める「ナルシシズム」、そして他者の痛みを理解はしても共感性に欠ける「サイコパシー」の3つの特性を持つ性格です。

こうした性格を持つ人は、自分の利益に忠実で、他者を切り離して考えることができます。他者を操作することに長けていて、一見愛想もよく、口がうまい。いかにも好感度が高い人物のように振る舞うことも上手ですから、多くの人は簡単に騙されてしまいます。

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