北朝鮮「金正恩への奇妙な個人崇拝」が合理的な訳 ばかげた神話の影にある「忠誠審査」という戦略

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北朝鮮の国旗
金一族は何千ものオペラを作曲したことになっていますが、こうした神話は、信用できる人間とそうでない人間とを選別する忠誠審査の役割を果たしています(画像:yuri/PIXTA)
横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

独裁者は悪行が上達する

なぜ悪人が上に立つのか: 人間社会の不都合な権力構造
『なぜ悪人が上に立つのか: 人間社会の不都合な権力構造』(東洋経済新報社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

学習は、権力を獲得し、手放さずにいるための必須の要因だ。そこから錯覚が生じる。データを分析すると、誰かが時とともにしだいに悪質になっているように見えるだろう――権力がその人を腐敗させているように。

だがじつは、その人の悪意は変わっておらず、腕が上がっただけかもしれない。その人は、常に腐敗していた。ただ、悪行が上達しただけなのだ。

独裁者や専制君主の間では、この現象には名前がついている。「独裁支配学習(authoritarian learning)」だ。

独裁者たちがサミットを開いて、考え方を共有することがある。もしそれが学会だったなら、「抗議運動の粉砕――事例研究」といったセミナーや、「反体制派をどのように消し去るか」についてのパネルディスカッションが行われることだろう。

実世界の格別興味深い例としては、1958年に毛沢東がソヴィエト連邦の指導者ニキータ・フルシチョフをプールに迎えたときのことが挙げられる。

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