横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
独裁者は悪行が上達する
学習は、権力を獲得し、手放さずにいるための必須の要因だ。そこから錯覚が生じる。データを分析すると、誰かが時とともにしだいに悪質になっているように見えるだろう――権力がその人を腐敗させているように。
だがじつは、その人の悪意は変わっておらず、腕が上がっただけかもしれない。その人は、常に腐敗していた。ただ、悪行が上達しただけなのだ。
独裁者や専制君主の間では、この現象には名前がついている。「独裁支配学習(authoritarian learning)」だ。
独裁者たちがサミットを開いて、考え方を共有することがある。もしそれが学会だったなら、「抗議運動の粉砕――事例研究」といったセミナーや、「反体制派をどのように消し去るか」についてのパネルディスカッションが行われることだろう。
実世界の格別興味深い例としては、1958年に毛沢東がソヴィエト連邦の指導者ニキータ・フルシチョフをプールに迎えたときのことが挙げられる。
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