古代アテネで用いられた「クレロテリオン」
もし権力が腐敗するとすれば、権力に飢えていて自らしゃしゃり出てくるような、腐敗しやすい小さな集団を腐敗させるよりも、ランダムに集まった人々の集団を腐敗させるほうが段違いに難しい。
数千年前、古代アテネの人々は、ランダムな数の持つ腐敗しない力を信頼していた。その結果、彼らは民主的な腐敗防止装置を考案した。それは巨大な石板で、何列ものスロットが入念に彫られていた。
この装置は、「クレロテリオン」と呼ばれていた。重要な決定を下すときには、市民はそれぞれ、「ピナキオン」という自分の専用の木か青銅の小さな板を装置のスロットに差し込んだ。
それから役人がハンドルを回すと、装置から黒いボールか白いボールがランダムに出てくる。ボールが黒なら、いちばん上の列の市民が考慮の対象から外される。もし白なら、ランダムに割り当てられた列の市民が任務に就く。
数字の書かれたボールが中で跳ね回る現代の抽籤(ちゅうせん)器の、事実上の古代版のようなものだが、くじの大当たりの数字を選ぶのではなく、意思決定者を選ぶのに使われた点が違っていた。
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