組織を腐敗させない「ランダムなくじ引き」の力 偶然で権力を与えれば傲慢な行動を防げる

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仲間や親族を贔屓(ひいき)することは、今よりはるかに難しくなる。ビジネスの世界では、影の取締役会は、四半期のプレスリリースよりも長期的な観点で考え、視野の狭過ぎる人々から生じる問題の解決策となると思っていいだろう。

第3に、政治制度はしばしば行き詰まり状態に陥るのに対して、普通の人々は歩み寄りに向かう傾向がある。

あなたと友人たちが、イタリアンレストランに行くか、伝統的なアメリカ料理のレストランに行くか、意見が合わなかったときに、誰かがその場を立ち去って、イタリアンレストランで出されるパンの質について反対意見だった人に攻撃広告を出すことなど、めったにないだろう。

だが、政治家は四六時中そんなふうに振る舞う。意思決定に普通の人をもっと多く含めれば、実際に権力を握っている人に圧力をかけ、人気を取るための見せ掛けばかりの行動ではなく、良識のある解決策へと向かわせることができる。

ランダムな権力は傲慢な行動を防ぐ

最近のある調査が、この取り組み方を支持する具体的な裏づけを提供してくれる。スイスのチューリッヒで864人を対象として行われた実験では、ランダムに獲得した権力と、競争を通して獲得した権力とを比較した。

すると、偶然に権力を握った人のほうが、傲慢な行動をしないことがわかった。ランダムに選ばれると謙虚になる一方、競争(たとえば、選挙)に勝つと、そうはならない。これは、たった1つの調査にすぎないが、その結果には勇気づけられる。

権力を望まない人こそ、その権力を振るうにあたって最も高潔なのかもしれない。

(翻訳:柴田裕之)

ブライアン・クラース ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン准教授

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Brian Klaas

ミネソタ州で生まれ育ち、オックスフォード大学で博士号を取得。現在はユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの国際政治学の准教授。『アトランティック』誌の寄稿者で、『ワシントン・ポスト』紙の元ウィークリー・コラムニスト。受賞歴のあるポッドキャストPower Corruptsのホストを務めている。個人のホームページはBrianPKlaas.com、Xのアカウントは@BrianKlaas。

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