なぜ「邪悪な人間」をリーダーに選んでしまうのか 「穏当な現状維持」がいずれ組織を腐らせていく

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テレビやネットは「もっともらしさ」を演出しやすい媒体だと思います。とくにネットは、一方的に自分の言いたいことを言えるメディアですし、画像や動画などによる演出も行いやすいでしょう。

人間は自分の見たいものを見ようとします。ネットの中で、自分が賛成できる意見ばかりを見聞きするうちに、エコーチェンバーと言われるような、「自分の意見や価値観はみんなに支持されている」という強い信念を抱きやすくなってしまうところもあります。

SNSで拡散され、何度も同じ情報に接することで、認知的にも情報処理がしやすくなり、嘘でも真実のように思えてしまうことすらあるのです。

穏当な現状維持を好めば組織は変わらない

SNS社会になって、SNSを使った独裁者が生まれやすくなってきていますが、同時に、悪事も暴かれやすくなっています。

その結果、日本でも、これまで安泰と思われていたような大企業や業界の様々な問題が表に出てきています。その背後には、「なんでこんなに自分勝手にやってきていたんだろう?」というリーダーがいます。「うちの会社にもこういう人がいる」と思う人は多いのではないでしょうか。

ただ、組織の中でそれを訴えるのは、まだハードルが高く、辞めてからでなければ声を上げられないのが現状です。組織には、穏当な現状維持を好む人が多く、異論を唱えると嫌がられてしまうのです。

被害を看過するということは、いずれ組織全体を腐らせていくんだということをみんなが認識して、声を受けとめることが必要でしょう。

(構成:泉美木蘭)

安野 智子 中央大学教授、社会心理学者

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やすの さとこ / Satoko Yasuno

東京大学社会学研究科社会心理学専攻博士前期修了、東京大学人文社会科学研究科社会文化研究専攻博士後期満期退学。2011年より現職。近年の研究テーマは、世論形成過程の社会心理学的分析、政治意識、信頼感と社会関係資本、ITリスク認知とリスクマネジメント。著書に『重層的な世論形成過程:メディア・ネットワーク・公共性』(東京大学出版会)、編著に『民意と社会』(中央大学出版部)がある。

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