昨今、百貨店の戦略では、富裕層とインバウンドを狙い、ラグジュアリーブランド、時計・宝飾、アートで攻めていく戦術が多い。が、どの百貨店もそこを狙うのであれば、同質化して“らしさ”は薄まってしまう。山口さんはどうとらえているのか。
「生活必需品としての機能価値を提供する百貨店の役割が小さくなり、楽しさや豊かさという付加価値を提供することが求められているのです」
ラグジュアリーが好調なのは、もちろん富裕層が動いていることもあるが、「ブランドとしての強固な土台を鍛えながら、未来に向けた価値をきっちり提案しているから」という分析だ。
阪急は、ラグジュアリーだからという理由でブランド導入をするのではなく、目指している価値観を共有・共感できる取引先として、ブランドと一体となって売り場を作り、ともに成長していくことを重視している。
ラグジュアリーとアウトドアがカテゴリーを超えて共存
その表れの1つが、来春「阪急うめだ本店」に登場する「グリーンエイジ」だ。“自然との共生”と“サステイナビリティ”の大切さを訴える売り場で、アパレルと雑貨の比率が約6:4と雑貨の比率が高い。
居並ぶブランドも、アウトドアもあればコスメブランドも、ラグジュアリーブランドもあるというから驚いた。
百貨店におけるラグジュアリーブランドの位置づけは、1階のメインスペースや、ブランド群を集積したフロアに豪勢なブティックを構えるのが常識。百貨店が設定したテーマのもと、ラグジュアリーが他ブランドと軒を並べるのはほとんど例を見ない。
「『自然と共生する暮らし』におけるファッションという私たちの掲げた思想に共感し、賛同を得た結果です」(山口さん)
これはまた、阪急百貨店と取引先とのかかわりだけでなく、阪急百貨店とお客のかかわりにおいても同様のこと。つまり、「グリーンエイジ」という売り場の思想に共感してくれた人が集まり、応援の意味も含めて買い物する、イベントに参加する。一種のコミュニティを作っていくプロジェクトでもある。
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