企画自体はコロナ禍前から進んでいたという。時代の大きな流れが、アウトドアも含めた自然と共生する生き方、ナチュラルで健やかな暮らし、ウェルネスな心と身体を求めるといったベクトルに向かっている。そういった中で、“阪急百貨店が提案する豊かな暮らしのありよう”を発信していこうと企画が進められた。
コロナ禍によって当初の予定より少し遅れたものの、プロジェクトの意義を改めて深掘りすることができたし、周囲からの賛同を得ることができた。満を持して来年春、登場するという。
具体的には、「アウトドアを通じて自らの暮らしを高めることを掲げた“グリーンネイバーフッドライフ”」と「自然に寄り添いながら、美と健康を実現し、自分自身も持続可能であろうという“グリーンウェルネスライフ”」をキーワードとした2つの小ワールドを作る。約2300㎡の売り場のうち70㎡ほどは、物販ではなくイベントやワークショップを行うスペースとして配するという。
「ファッションを主語にしていない」
百貨店の中で婦人服が稼ぎ頭であることは、ここで改めて触れるまでもない。そのルーツは歴史にある。既成服の普及をはじめ、欧米のトップデザイナーの服を紹介するなど、百貨店はファッションを牽引する存在として、大きな役割を果たした。その後、右肩上がりで成長していたアパレル業界と一体となり、百貨店は売り上げを伸ばしてきたのである。
ところが、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍を経て、その威力はあきらかに衰えている。阪急はファッションをどうとらえているのか。
「うちはファッションを主語にしていないのです」(山口さん)
ファッションありきでとらえると、トレンドやヒットアイテム、人気ブランドやデザイナーの話に落ちていくが、阪急は同社のビジョンである「暮らしを楽しく 心を豊かに 未来を元気にする楽しさNo. 1百貨店」という文脈の中でファッションをとらえている。「暮らしのありよう=ライフスタイル」を土台にしたファッションを基軸に、ものではなく「楽しく」「元気に」というマインド作りに比重を置いているのだ。
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